第358話 ページ29
「じゃが少年探偵団は汝ら五人じゃろ?」
「はい……でも、この子、キッドがどうしても見たいって言って、こっそりついてきたみたいです」
シェリーはそれっぽい言い訳を口にして、私をキッと鋭く見つめた。
貸しが増えてしまった。いったい次は何を献上すればいいのだろうか。
「灰原さん、ボクあの子知りませんよ……?」
「哀ちゃん、歩美も……」
「オレもしらねぇぞ!」
「あなた達、ちょっと悪いけど私に話、合わせてくれる? あの子、ちょっと事情があるの」
「事情……? 哀ちゃんのお友達さんなの?」
「まあそんなトコロかしら……私と江戸川くんの、厄介で大切な知り合いよ」
「灰原さんがそう言うのなら、わかりました」
「わかったぜ、灰原」
ボソボソと少年探偵団が大人に聞こえない声で話をしている。ありがとうございます、と私はぺこりと頭を下げた。しかしまだシェリーは私のことをきつく睨んでいる。
「今からVTRを見るためにテレビをこのお堂の中に入れるんだが、そのお友達もお堂の中に入ったらどうだ?」
中森警部が私に背を向けて、シェリーにそう提案した。
鈴木相談役が「じゃが……」と一瞬否定しそうに口を動かしたが、すぐ結び、その提案を受け入れた。
「子供なら怪盗キッドも化けられないだろうし。中に人を増やす分には問題なさそう……」
「よーし、決まりだ。テレビとその子を中に入れろ!」
下見を含め中に入るのは初めてだ。中に入ってもやっぱりこの中はボロいなあと改めて思う。
ぼーっと麒麟の像を見ているとシェリーが寄ってきて「どういうつもり?」と耳打ちする。
当然私とキッドの関係は伏せなければ、と思いつつ口を動かす。
「ちょっと君達に用があったんだ」
「このキッド騒ぎが終わるまで待てなかったのかしら?」
「待つつもりだったけど、警察に見つかったんだよ」
「ふうん、バーバラーーAさんも案外不用心なのね」
「シェリーって人のこと煽るの上手だよね」
「褒めてるつもりかしら……? でも助けてあげたんだから、あなたも知恵貸しなさいよね」
「知恵? いったいなんの?」
惚けるとシェリーは事件の流れ、事の経緯を丁重に説明してくれた。
しかし私はキッド側なのだ。なんならこの仕掛けの答えを知っているんだよなあ。
勿論顔や態度には出さないように「それでそれで?」と適当に相槌を打った。
「ーーと、ここまでが今の状況。で、実際にVTR見て確認しようってわけ」
「ちなみにさ、このVTRってテレビ流れてんの?」
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匿名 - 初めまして。楽しく読まさせて頂いています。一つ尋ねたいのですが195話で言っていた「零」シリーズ?はどこに行ってしまったのでしょうか?読みたいのですが見当たらなく…もし公開していないのであればぜひ公開してほしいです。宜しくお願いします。 (2022年1月11日 19時) (レス) id: 0d9a3fa9b5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - とっても面白いです。続きを楽しみにしてます。 (2021年6月26日 20時) (レス) id: 2e973fc2c9 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - もしこのサイトを開く機会があれば、またほかのサイトで書くことがありましたら、ぜひまた読ませてもらいたいと願うほど、本当に素敵な作品でした。ありがとうございます (2021年5月12日 12時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 本当にとても面白かったです!更新待ってます!!! (2020年8月5日 22時) (レス) id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - ただの純愛じゃなくて、少しドロドロ?してて面白いです!組織がやってることブッ飛んでるな、とか思いつつ笑 快斗と主人公がこれからどうなるのか、組織にまたまた捕まってしまうのか展開が楽しみです!更新楽しみにしてます! (2020年5月28日 23時) (レス) id: 9f6637cdbb (このIDを非表示/違反報告)
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