第356話 ページ27
「……雨、弱まってきた?」
参道から離れ、これからどうしようか考えていると少しずつ雲が晴れていった。もうじき月も見えるだろう。多分そろそろあちらのショーも終わる気がする。
「もう一回警官に化けるか、このまま乱入するか、それとも……」
顎に手を当ててわざとらしくうーんと考える。
解毒剤は持っていないし幼児化解除が不安定すぎるからやめておいた方がいいかもしれない。
やっぱり最初に思っていた通り、寺井さんのところに行くか。
「えーっと、どっちだっけ?」
木々をかき分け、山を下る。今度は転ばないように慎重に一歩ずつゆっくり足を動かす。
がさがさと音がなってしまうが、転ばないためだ仕方がないーー
「ん? なあ、今物音がしなかったか?」
「物音……?」
「ああ、どちらかと言えば足音のような……」
ーーすぐ近くで男たちの声がして私はその場に固まった。
警官だ。警官がいる。歩くのに一生懸命になってたら気配に気がつかなかった。
私は息を止めて、物音を立てないように木の陰に隠れる。
「気のせい、じゃないか?」
「でも怪盗キッドの手下だったら……自分、見てきます!」
うわ、詰んだ。やばい。少し距離を取ろうと思って足を動かすと転がっていた木の枝を踏んでしまいパキッと軽々しい音が周囲に響いた。当然、警官はその音に反応する。
「やっぱり……こちらD班。不審な音を確認しました。キッドの手下かもしれません!」
どうしよう。焦ったところでいい案は浮かばない。何か策はーー
「こっちの方から聞こえたんだ……こ、子供!?」
何もすることができず、普通に見つかる。今逃げるのはまずいし、逃げなくてもまずい。
警官は私に近づき「お嬢ちゃん、何やってるんだい?」と顔を覗き込むように聞いてくる。
「えっ、えーっと……」
数歩後ずさりして回答に迷っていると、数人警官がやってきてあっという間に取り囲まれる。
お……終わった。一気に血の気がサァと引く。
「なんだよ。キッドの手下かもって連絡を受けたのに、こんな子供じゃねえか」
「でもキッドには手下がいるんだろ? 若い女とか男の老人とか……」
「若い女って言ったって……いくらなんでもこんな子供が手下な訳ないだろ」
警官が口々に言い合って、私から注意が逸れていく。
今ならワンチャン逃げ出せるかもしれない、だけど逃げきれる自信はない。
だったら……と私は息を大きく吸って。
「ファンなの! わたし、キッド様のファン!」
と子供のように叫んだ。
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匿名 - 初めまして。楽しく読まさせて頂いています。一つ尋ねたいのですが195話で言っていた「零」シリーズ?はどこに行ってしまったのでしょうか?読みたいのですが見当たらなく…もし公開していないのであればぜひ公開してほしいです。宜しくお願いします。 (2022年1月11日 19時) (レス) id: 0d9a3fa9b5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - とっても面白いです。続きを楽しみにしてます。 (2021年6月26日 20時) (レス) id: 2e973fc2c9 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - もしこのサイトを開く機会があれば、またほかのサイトで書くことがありましたら、ぜひまた読ませてもらいたいと願うほど、本当に素敵な作品でした。ありがとうございます (2021年5月12日 12時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 本当にとても面白かったです!更新待ってます!!! (2020年8月5日 22時) (レス) id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - ただの純愛じゃなくて、少しドロドロ?してて面白いです!組織がやってることブッ飛んでるな、とか思いつつ笑 快斗と主人公がこれからどうなるのか、組織にまたまた捕まってしまうのか展開が楽しみです!更新楽しみにしてます! (2020年5月28日 23時) (レス) id: 9f6637cdbb (このIDを非表示/違反報告)
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