第355話 ページ26
「了解です」
とは言ったものの、この場を離れるのはなあ。
工藤新一が気絶している以上、怪盗キッドと工藤新一の対決は見られないわけだし、万が一でもシェリーに気づかれたら面倒だ。距離を取っておくのは大事か。
振り返ってお堂を一瞥してから他の警官を追いかけた。
山の麓に行くには整備されてない道を通るのが近道だ。
しかしこの大雨で地面はだいぶ泥濘んでいる。走りづらいったらありゃしなーー
「うわっ!」
すてん。まるで昭和の漫画のように。
余計なことを考えていたせいか、足を取られ見事に転んでしまった。
おかげで他の警官は見えなくなったし、服は泥だらけだ。
追いかけようか、追いかけまいか、数秒考えて追いかけないを選択する。
だがお堂に戻る口実もないし、ここで雨に打たれるのもな。一度寺井さんのところに顔を出して、脱出経路を探すのもアリかもしれない。そうだな、そうしようと思い、警官の変装をとく。
「雨、弱くなっーー!? ぐっ……」
私はぐらりとドミノのように倒れこむ。幸い変装をといた時に投げ捨てた警官の服で地面に直で横渡ることはなかったが、急に胸が苦しくなって起き上がれなくなる。
「がッ……う……あ!」
息も絶え絶えで、体が熱の塊になったみたいに熱い。心臓の動悸なのに全身が跳ねている感覚。
締め付けられるようで、引き延ばされるようで、でも圧迫されている。
この感覚、知っているーー幼児化だ!
「な……まだそ、んな時間は……」
経ってないはず。だいぶ快斗とその、えっと、キーーキスはしていたはずなのに。長々とそう、舌を絡めて、もうやらないって約束したけど幼児化解除のためだから仕方なく、体を近づけてーーってなんで余計なことまで思い出してんだ。
とにかくまだそんな時間は経ってないはずなのに、もう子供に戻りはじめている。
全身に煙がまとわりついていて、きっともうすぐに138cmの自分になってしまう。
なんで、どうして、こんなに、はやく。
小さくなった手を睨みつけながら、頭を冷静にするために、何度も深呼吸をした。
「……もしかして、もう
幼児化と幼児化解除を繰り返していたら体の方にガタがきたのだろうか。
いやでも私が服用したのはいい意味でも悪い意味でも改良されたAPTX4869だ。
これは流石に組織に戻らないとーー
「でも今は……怪盗キッドの手下なんだよね」
また一瞬だけ雨が強まった。
私は手を握りしめ、自分の痕跡を消し山に身を潜める。
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匿名 - 初めまして。楽しく読まさせて頂いています。一つ尋ねたいのですが195話で言っていた「零」シリーズ?はどこに行ってしまったのでしょうか?読みたいのですが見当たらなく…もし公開していないのであればぜひ公開してほしいです。宜しくお願いします。 (2022年1月11日 19時) (レス) id: 0d9a3fa9b5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - とっても面白いです。続きを楽しみにしてます。 (2021年6月26日 20時) (レス) id: 2e973fc2c9 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - もしこのサイトを開く機会があれば、またほかのサイトで書くことがありましたら、ぜひまた読ませてもらいたいと願うほど、本当に素敵な作品でした。ありがとうございます (2021年5月12日 12時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 本当にとても面白かったです!更新待ってます!!! (2020年8月5日 22時) (レス) id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - ただの純愛じゃなくて、少しドロドロ?してて面白いです!組織がやってることブッ飛んでるな、とか思いつつ笑 快斗と主人公がこれからどうなるのか、組織にまたまた捕まってしまうのか展開が楽しみです!更新楽しみにしてます! (2020年5月28日 23時) (レス) id: 9f6637cdbb (このIDを非表示/違反報告)
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