第350話 ページ21
「おかえり……遅かったじゃん?」
「ああ、ちょっとな」
「ちょっと?」
「いや、別に……」
帰ってきた快斗は少しだけ難しそうな表情をしていたーー気がする。
気になるがまあいいだろうと言葉を飲み込む。
快斗は学ランを脱いで、ソファに深く腰掛けた。
「爆薬とか……ジイちゃんが手に入れてくれたやつ」
「あざーす。あ。そう、スピーカーはこんな感じで良き?」
お互いの持っているものを交換したときに指が触れる。
……もう気にならない、ふりをするが。
「おっけー。完ペキ。さっすがA」
「音も……一応調節はできるけど、なんか気休め程度くらいだよ」
「大丈夫。どうせこの音を聞き取れんのはあの探偵団くんたちだけだし」
「もしさ、いつもみたいにテレビ局が来て、若いスタッフがいたらどうするの?」
快斗の返事を待ちながら手を動かす。
時限爆弾……時計を改造すればいいから比較的楽。
しかし問題はそれなりの個数を作らなきゃいけないことだ。
「若いスタッフが来ないようにすりゃあいい」
「それもそうだね……にしてもこれ時限式じゃなくて、スイッチ押したら爆発する風にしたほうがいいんじゃないかな」
「なんでだ?」
目をやや見開いて、快斗は私の顔を覗き込んだ。
えっ、と私は固まってから「……私の仕事量が減るから」と答える。
「手抜くんじゃねーよ……A」
コツンと快斗は私の背中を軽く右手で突く。
痛くはないが反射的にいてっと声を上げてしまう。
「怪盗キッド様はひどい上司だなあ〜」
「よぉく考えろ。スイッチなんか押したら名探偵にバレちまうかもしれないだろ」
それっぽい理由を述べて快斗は立ち上がり、自分の部屋に行ってしまった。
仕方ないなー、と思いながら爆薬とタイマーが置かれた机に向かい合う。
* *
「これかもな……」
部屋に戻ってAの尻ポケットにあった拳銃を手に取る。
俺たちのあとをつけていた男が言っていた『Aに取られたモノ』がこの拳銃だろう。
指紋を調べたところで……あの男の正体がわかっても意味がない。
丁重に返したところであの男がもう接触して来ないなんて保証はない。
第一あの男はどこにいるかわからないしな……。
「……とりあえず」
拳銃は引き出しの中へ。椅子を引きパソコンを起動する。
今は麒麟の角だ。健気な手下が働いてくれてんだ。このショーの準備を進めないとな、とキーボードを叩く。
ひと段落したらAにそれとなく声をかけてみるか。
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匿名 - 初めまして。楽しく読まさせて頂いています。一つ尋ねたいのですが195話で言っていた「零」シリーズ?はどこに行ってしまったのでしょうか?読みたいのですが見当たらなく…もし公開していないのであればぜひ公開してほしいです。宜しくお願いします。 (2022年1月11日 19時) (レス) id: 0d9a3fa9b5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - とっても面白いです。続きを楽しみにしてます。 (2021年6月26日 20時) (レス) id: 2e973fc2c9 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - もしこのサイトを開く機会があれば、またほかのサイトで書くことがありましたら、ぜひまた読ませてもらいたいと願うほど、本当に素敵な作品でした。ありがとうございます (2021年5月12日 12時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 本当にとても面白かったです!更新待ってます!!! (2020年8月5日 22時) (レス) id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - ただの純愛じゃなくて、少しドロドロ?してて面白いです!組織がやってることブッ飛んでるな、とか思いつつ笑 快斗と主人公がこれからどうなるのか、組織にまたまた捕まってしまうのか展開が楽しみです!更新楽しみにしてます! (2020年5月28日 23時) (レス) id: 9f6637cdbb (このIDを非表示/違反報告)
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