第345話 ページ16
理性はあった。多分。お互いに。だけどそんなものぶっ飛ばそうと思えばすぐにでもそうできた。そうしないのは罪悪感というか後ろめたさがあるからだろうか。だけど、罪悪感なんてものはきっと没頭している間は忘れることができるということを知っている。そして求めればそれ以上のものを快斗はくれると私は知っている。
揺れて。伸ばして。
止まって。息をついて。
彼の目を見て。彼が笑った。
ずるい。
多分私も笑った。
「ね……」
「何? A」
わかってるくせに。
快斗は私の首筋に残る跡を触る。冷たいしなやかな指先が鎖のように首に纏わりついた。
「……もうちょっと」
「もうちょっと、なに?」
「いじーー」
続きを言おうとして、口が塞がれた。我慢できないのはどうやら私だけじゃなかったようだ。欲しかった口の中の甘さだ。麻薬みたいになんども求めてしまう。ダメだとわかっているのに。抵抗は無意味。無論抵抗する気もないが。
「A」
視界がぐるんと回って、床に押し倒される。照明の位置的に快斗の顔はよく見えなかった。腰のあたりに快斗が跨って、首筋から鎖骨と舌で舐められる。ビクと躰を跳ねさせて声を漏らしてしまうと快斗が楽しそうに口許を緩めた。
「せめてソファ……」
「あー」
快斗は私の腰に手を回しひょいと持ち上げる。そうーーあれだ、お姫様抱っこ。今更なが恥ずかしくなって顔を横に傾けた。ソファに持ち上げられるのかと思ったら、快斗は彼の部屋へと向かった。そしてベットの上に優しく寝かせられる。
ちらりと部屋の時計が見えた。もう夕餉の時間だろうに。「ご飯、食べに行かなくていいの」と顔を合わせずに訊く。
「さっき今日はいいって青子に伝えた」
「え」
「気にしなくていい」
スッと服の上から胸のふくらみを触られ思わず声が漏れる。体の少しのけぞらせるとその分ベットに沈んだ。ベットから快斗の匂いがして、快斗に包み込まれているみたいだった。「それって」と言いかけたところで快斗が耳元にフッと息をかける。
「俺以外のコト、考える余裕あるのか?」
低い、低い声だった。首を横に振って「ない」と答えると快斗は耳を甘噛みしてから「いい子」と呟いた。声だけで腰が浮きそうになるくらいだ。ぞわりと背筋に何かが走る。
「快斗……」
「A」
名前を呼びあって、恋人のように指先を絡めた。でもこれはただの『ごっこ遊び』。それがわかっているから、さらに気分が昂るんだと、私も快斗も知っていた。
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匿名 - 初めまして。楽しく読まさせて頂いています。一つ尋ねたいのですが195話で言っていた「零」シリーズ?はどこに行ってしまったのでしょうか?読みたいのですが見当たらなく…もし公開していないのであればぜひ公開してほしいです。宜しくお願いします。 (2022年1月11日 19時) (レス) id: 0d9a3fa9b5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - とっても面白いです。続きを楽しみにしてます。 (2021年6月26日 20時) (レス) id: 2e973fc2c9 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - もしこのサイトを開く機会があれば、またほかのサイトで書くことがありましたら、ぜひまた読ませてもらいたいと願うほど、本当に素敵な作品でした。ありがとうございます (2021年5月12日 12時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 本当にとても面白かったです!更新待ってます!!! (2020年8月5日 22時) (レス) id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - ただの純愛じゃなくて、少しドロドロ?してて面白いです!組織がやってることブッ飛んでるな、とか思いつつ笑 快斗と主人公がこれからどうなるのか、組織にまたまた捕まってしまうのか展開が楽しみです!更新楽しみにしてます! (2020年5月28日 23時) (レス) id: 9f6637cdbb (このIDを非表示/違反報告)
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