【怪盗キッド】奇術師と道化師 肆

第１６９話 ページ34

『俺の目的』とはなんだろうか。なんて考えつつ音声データを再生する。
かなり量があったので二倍速で。

「……『俺の目的』ね」

それは私の利益と一致する――筈なんだ、なんて考えつつ。

　 ＊ ＊

『愛する人を亡くすことがどんなに辛いか……。そうならないように頑張ってくれ、工藤君……』

依頼人はそう言い残して通話を切った。謎は深まるばかりだった。
何故アイツは俺の正体――俺が工藤新一だと知っている？ アイツは何者なんだ？

≪あの女が嘘をついている可能性だってあるし≫

不意に、いつの日かの灰原の言葉が浮かんだ。あ、と一度思考が止まる。
ここ最近で俺の正体を新たに知った人物はあの女――バーバラだけだ。

バーバラは組織の人間だ。そう考えてしまえは辻褄が合わないことは無い。
けれど今までの経験上これが組織ぐるみの事件だとは思えない。
それともこれは本当に組織の事件でないとも言い切れない。

頭の中で考えているだけでは埒が明かず、俺は彼女から貰った連絡先に電話をかけた。

　＊ ＊

音声データを聞き終わってからの私の行動は早かった。
まずは快斗に連絡を入れこれからをしっかり話した。
快斗は「俺のプランとほぼ一致している。流石だ」と無駄に上から目線で言い、とりあえず常に連絡を取れる環境にしようと提案した。

携帯でもいいが電池の面を考えて、『怪盗キッド』の時に使うインカムで連絡を取り合うことにした。暇だった時にかなり離れていても通信できるように改造してしまったのが役に立った。

『あ〜あ〜聞こえるぅ？』
「その声は……鈴木園子かな」
『ちゃんと聞こえるのね！ 携帯電話並みじゃん』
「暇人なもので。でもいつも道具を作っている人には負けるけど」

なんてくだらない会話をしていると携帯の通知音が鳴った。――そして胸も高鳴った！
通知音は着信音、誰からの着信かと言えば……工藤新一である。
一気にテンションが上がる。

『誰からの電話だ？』
「工藤新一〜〜いえええい」
『このままの状態で通話しろ、名探偵がどこまで把握しているのか知りたい』
「どうしよっかな。……はいはい、ちゃんと貴方にも名探偵の声を聞かせてあげますよ」

なんだか、快斗とのこんな軽い絡みも久々だな、と思いながら、私は通話に出た。

「もしもし？」
『お前は組織に俺のことをばらしたか?』
「斜め上すぎて」

インカムの向こうからは快斗の押し殺した笑い声が聞こえてくる。
私も思わず吹き出しそうにはなったけど。

第１７０話→←第１６８話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す