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第166話 ページ31

水の切れが悪かったのか、一定間隔でピチャンとシャワーから水が滴る。
なぜかその音に合わせて彼は指先に力を入れたり、抜いたりする。
「人の首を触るのがそんなに好き?」と聞くと彼は力を入れるのをやめた。

「いや、Aに触れているのが好きだな」

快斗は恐らく、黒い笑いを浮かべているのだろう。
右手が首を離れ、鎖骨、胸の間、腹、臍、とゆっくりに下がっていく。
左手も右手を追うように、鎖骨、胸の間、と下がる。

「――お前はどこが感じるんだっけな」

不意に耳元で彼はそう呟き、思わず、ぞわりとする。

「水中だから……感じるとかないと思う」
「強がり」

ペロリ、と首筋に生暖かい感触――即座にそれが彼の舌だとわかる。
肩が大きく揺れ、水面に小さい波が立つ。
その反応を見て彼はまた、私の首を猫のように舐めた。

思わず、「ひゃあっ!」と変な声が漏れる。
慌てて口を塞ごうとするも、いつのまにか、両手は彼の右手によって押さえつけられていた。

「聞かせて?」

また耳元でそう彼は言う。反射的に再度変な声が漏れる。

「何もしてないのに」

フッと彼が笑う。その息が耳にかかっただけでもどかしい。
やめてなんて言えない――否、言いたくない?
今日の快斗は変だな、とか考えてたこと全部、どうでもよくなる。
彼に触れていたい、彼に触れられていたい、彼と気持ちよくなりたい。

「――A俺の中に収まっちまうんだな」
「そりゃ、今のサイズなら……ん、じゃなくてもそうか」
「なら俺の中にずっと閉じ込めていたい」

ぴちゃぴちゃと五月蝿かったシャワーの滴りはいつの間にか消えていた。


「閉じ込めても……快斗は、別の女の人を見るでしょう?」
「――ああ。最低だな、俺」

私はうんと頷いた。でも。

「――私も、貴方の見てくれだけを見て、他の幻影を望むんだ。貴方の中で」
「俺は代用品ってことか」
「たぶん」

――――だけどそれで満足なんだ。きっとお互いそれで、いいんだ。

「おかしいよな、俺も。Aも」

私が「だよね」と同意しようとした瞬間、ぎゅ、と強く抱きしめられる。

今はどうしてか、この水が邪魔だ。直かにもっと彼に触れていたい。なんて。
でもこのままでいいと思う。このまま、少し時が止まってくれればいいのに。


「よし、あがる」
「ようやく?」

私ははぁと息をつく。

「ま、続きがしたいならやってやらないこともないけどな」

そういってにやと笑い彼はシャワーを浴びて風呂場を出て行った。

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設定タグ:黒羽快斗 , 名探偵コナン , 怪盗キッド   
作品ジャンル:アニメ
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イヲハ(プロフ) - 優さん» お久しぶりです、いつもコメントありがとうございます! こちらこそ、お読みいただき感謝です。 安定して更新できるようにしてけるように頑張りますのでどうぞこれからもよろしくお願いします。(*^_^*) (2017年11月8日 19時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 最近更新多くて嬉しみが溢れております。ありがとうございます。(´∀`*) (2017年11月8日 16時) (レス) id: 9f27e32488 (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 蓮花さん» →ところなんですよね()。絶妙な距離感、頑張ります! お風呂はしんどいです笑。 頑張ります! ありがとうございます! 深夜&長文レス失礼しました。 (2017年10月28日 0時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 蓮花さん» コメントありがとうございます。壱から…! お読みいただき感謝です。台本書きではないのであまりこのサイトでは迎合される書き方ではないので、タイプとおっしゃって下さって大変光栄です。ありがとうございます! エロティック…押さえられるようにしなくてはって→ (2017年10月28日 0時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
蓮花(プロフ) - 初コメ失礼致します!!関連ランキングにて、此方の作品を発見しまして、一から全て読ませて頂きました。一言で言うと、どタイプですね。笑 何よりキッドとの絶妙な距離感だとか、少しエロティックな関係性が好きです() お風呂入らないの辛いですよね…頑張ってください!! (2017年10月26日 23時) (レス) id: dd254419fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イヲハ | 作者ホームページ:(*/□\*)  
作成日時:2016年11月5日 22時

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