第164話 ページ29
「え?」
Aはあからさまな動揺をするわけでもなく、素で訊き返してきた。
「だから、今、入ればいいじゃんって」
「いくらなんでもそれは……」
ドア越しの会話が怠くなって、俺はドアを開けた。
するとAが目を大きく見開いて驚いていた。
* *
「――嫌なのか?」
彼――快斗はそう呟いた。
うえええ? と私は困惑する。
嫌とかそういうんじゃなくて、なんというか急じゃないか。
確かに一緒に暮らしてから長いが、そういうのはあの酔った時しかなかった。
だからただただ謎である。つーか頭回らん。
「い、やじゃないけど」
「じゃこいよ。服ぬげって」
「……もしかして裸みたいだけ?」
「なんでもいいよもー」
なんでもいいってなんだ。そう思いつつ私は服を脱ぎ始める。
快斗は背を向けて、浴槽につかった。
「入るよ?」「どうぞ」
即答すぎて。そうなんだけど。
「あんまり見ないようにするから」
「じゃあ一緒に入る意味よ」
「なんだ俺に見てほしいのか。少なくともその体じゃ何とも思わねーよ」
「失礼なーっていうか、快斗今日本当に変だよ?」
私はレバーをひねってシャワーを浴びる。
「別に、一緒にいたいだけ」
水音に少しかき消されたが、確かに聞こえた。
「一緒にいたい、ってかわいいね」
「るっせ、んなこといってねえよ。早く入れって」
「向かい合って入ったら、いろいろ見える」
「こーやってはいればいいだろ、同じ向き向けよ」
そもそもこの状況に全然ついていけない。どうしてこうなった。
ちゃぷん、と浸かる音。肌と肌が少し触れる。なんか緊張。
「つかれた」
「お疲れ様、東京行って、横浜行ってだもんね」
「癒せよ」
「なにそれ。どうすればいいの?」
「――抱きしめていい?」
一瞬空気が張り詰めた。私はフッと笑って「青子さんじゃないよ、私は」なんて言ってみる。
「青子じゃなくて、Aがいい」
「本当に今日どうしたのさ」
すっと、私の体に快斗の手が触れる。そしてそのまま肌が密着した。
相手の鼓動が聞こえる。息がかかる。熱が伝わる。
水中の違和感、胸中の罪悪感。
「髪、やっぱなげーな」
「幼児化繰り返すたびに伸びるの」
「体華奢だなー、折れちまいそう」
すると、より強く抱きしめられる。変な感じだ。
「快斗らしくないね。ただの男子だ」
「自分でもなんか変だってわかってる、もう少しこのまま」
「んー」
――彼氏とか家族とかそういうを彷彿とさせる。
私にはどっちもいないけどな。なんて。
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イヲハ(プロフ) - 優さん» お久しぶりです、いつもコメントありがとうございます! こちらこそ、お読みいただき感謝です。 安定して更新できるようにしてけるように頑張りますのでどうぞこれからもよろしくお願いします。(*^_^*) (2017年11月8日 19時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - 最近更新多くて嬉しみが溢れております。ありがとうございます。(´∀`*) (2017年11月8日 16時) (レス) id: 9f27e32488 (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 蓮花さん» →ところなんですよね()。絶妙な距離感、頑張ります! お風呂はしんどいです笑。 頑張ります! ありがとうございます! 深夜&長文レス失礼しました。 (2017年10月28日 0時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 蓮花さん» コメントありがとうございます。壱から…! お読みいただき感謝です。台本書きではないのであまりこのサイトでは迎合される書き方ではないので、タイプとおっしゃって下さって大変光栄です。ありがとうございます! エロティック…押さえられるようにしなくてはって→ (2017年10月28日 0時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
蓮花(プロフ) - 初コメ失礼致します!!関連ランキングにて、此方の作品を発見しまして、一から全て読ませて頂きました。一言で言うと、どタイプですね。笑 何よりキッドとの絶妙な距離感だとか、少しエロティックな関係性が好きです() お風呂入らないの辛いですよね…頑張ってください!! (2017年10月26日 23時) (レス) id: dd254419fa (このIDを非表示/違反報告)
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