第160話 ページ25
Aに照明をもとの明るさにもどすように命じ、俺は射線が通らないであろう場所に移動した。
そして、ポンと煙をだし、わざと周囲を惹きつけた。
「中森警部! これは私の仕業ではありません」
「キッド……! ああ、わかってる、お前が我々警察に実害を加えることは無いことは重々知っている」
さすが中森警部、話が早い。これならば……。
俺はすかさず、宝石を月に照らし、パンドラかどうか確認する。
――生憎と言うかいつも通りと言うか、お察しの通りパンドラではないことがわかった。
「警部、この宝石は目当てのものではありませんでした、のでお返しします」
ひょい、と軽々しく投げると宝石なんだから大事にしろよ……と警部の小言が耳に入る。
本来こんな会話をしている場合ではないのだが。
「キッド、俺は警部の勘で今回の四発の狙撃はお前を狙ったものだと思うのだが」
「ええ。私もそう思います……。しかし、狙撃手は私以外に当たってでもいいから私に当てたいという若干の矛盾を抱えたような撃ち方に見えます」
「俺もだ。ま、お前が大人しく捕まってくれるのなら、お前の身の安全は保障するが」
俺は意図せずとも口角を上げる。そんな事。
「――あるわけないじゃないですか、警部」
ぽんと再び煙をだし、俺は姿を晦ました。
美術館を抜け、大通りに俺は出没する。
ここなら人が多すぎるだろうし、そもそも俺がキッドかどうか区別がつかないだろう。
だからここなら安全――
――刹那、耳に届いたのは聞き覚えのある、弾ける乾いた音だった。
「……まじかよ!」
思わず声に出してしまった。
俺の後方約数十メートルの女性の右腕に銃は命中したらしい。
大通りは恐怖で包まれる。
「――大丈夫ですか!?」
倒れた彼女に声をかけていたのはAだった。
俺も急いでその場に駆け寄る。
「A、その人は――」
「幸い腕だから、平気なはず。でも救急車を!」
「ああ」
* *
数十分後、救急車が到着し、先程撃たれた警官含め、病院に搬送された。
私たちはその混乱に乗じてその場を離脱し、帰路につく。
家につくまで緊張は解けなかった。いつ狙撃されるか、いつあの乾いた音がこの耳に届くか、そんな恐怖がじわじわ蝕むように、私達の心を巣食った。
「この狙撃は現金輸送車のアイツらの仕業……?」
「だろうな、でも宝石は返した筈なのに」
相当厄介な出来事になりつつあるぞ、と快斗は嘆息する。
そこには自責の念があるようにも見えた。
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イヲハ(プロフ) - 優さん» お久しぶりです、いつもコメントありがとうございます! こちらこそ、お読みいただき感謝です。 安定して更新できるようにしてけるように頑張りますのでどうぞこれからもよろしくお願いします。(*^_^*) (2017年11月8日 19時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - 最近更新多くて嬉しみが溢れております。ありがとうございます。(´∀`*) (2017年11月8日 16時) (レス) id: 9f27e32488 (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 蓮花さん» →ところなんですよね()。絶妙な距離感、頑張ります! お風呂はしんどいです笑。 頑張ります! ありがとうございます! 深夜&長文レス失礼しました。 (2017年10月28日 0時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 蓮花さん» コメントありがとうございます。壱から…! お読みいただき感謝です。台本書きではないのであまりこのサイトでは迎合される書き方ではないので、タイプとおっしゃって下さって大変光栄です。ありがとうございます! エロティック…押さえられるようにしなくてはって→ (2017年10月28日 0時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
蓮花(プロフ) - 初コメ失礼致します!!関連ランキングにて、此方の作品を発見しまして、一から全て読ませて頂きました。一言で言うと、どタイプですね。笑 何よりキッドとの絶妙な距離感だとか、少しエロティックな関係性が好きです() お風呂入らないの辛いですよね…頑張ってください!! (2017年10月26日 23時) (レス) id: dd254419fa (このIDを非表示/違反報告)
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