第157話 ページ21
* *
――――いつかの記憶。
それが夢だったか、現実だったかは覚えてないけども。いや恐らく現実なんだろう。
致命傷を負った組織のメンバーが無傷で次の日私の目の前に現れた記憶がある。
確か「彼はもう手の施しようがない」と誰かが呟いていた。
すると誰かが「ならば『あの実験』をしてみないか」と囁く。
死人に口なし、ではないがどうせ死ぬ輩なら最後まで使い切ろうという最悪な魂胆だ。
私はその会話を何故か聞いていた――何故だろう?
ああそうだった。私もそこに居たんだった。
もう施しようがない、手遅れな彼を呆然と見ていたんだった。
血が流れ、流れ、流れ続けてる彼を。
『実験』はすぐに執り行われていた。
私は傍観者となるのだろうか、なんて考えていた矢先、首筋に鋭い痛みが走った。
確かそう、ここで私の記憶がまず途切れる――
気が付いた時には、疲労感だけが私の体に残っていた。
鉛のように重い体をやっとこさ起こすと、そこに居た研究者が笑みを浮かべてこういった。
「大成功だ、あのお方もさぞお喜びになるだろう」
何の話をしているか、理解不能だった。
しかし、すぐ隣に『手の施しようのなかった彼』がいることで私はそれなりに悟った。
だが研究者に私は問う。
「何をしたんですか? 『彼』に――いや私に」
上機嫌な研究者は気持ち悪い笑みを浮かべてご丁寧に説明をする。
私を使った、致命傷の治し方を。
* *
雀のさえずりで目が覚めた。
私のすぐ横には快斗がいて、私が目覚めた数秒後に彼も目を覚ます。
お互いに働かない頭で、お互いの生存を確認した。
「……昨日のはいったい」
快斗がぶっきらぼうにそう聞く。
私は数秒黙って「奥の手」と言った。
無論これだけで説明になるとは思ってないのでふぁ。と欠伸をしてからこう続けた。
「ちょっと前にさ、組織でさ、実験してみたことがあって――」
――私の幼児化を解除した状態でもう一度APTX4869の改造版を私がまた服用する。
幼児化が始まる前に私の血液だか色々を採取して他人の怪我の患部に塗ると治るんだってさ。
やり方は聞いたけど理論はよくわからない。
ま私が服用しているAPTX4869が超回復やら体細胞分裂の活性化を促す薬らしいからそのメカニズムなんじゃないかな――
と一息で話しきる。
実のところ私は何故この方法で人の怪我が無に帰るのか全く持って理解してないが、やり方は知ってるので使ってみるまでだ。
勿論、私の相当な疲労と引き換えではあるが。
628人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イヲハ(プロフ) - 優さん» お久しぶりです、いつもコメントありがとうございます! こちらこそ、お読みいただき感謝です。 安定して更新できるようにしてけるように頑張りますのでどうぞこれからもよろしくお願いします。(*^_^*) (2017年11月8日 19時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - 最近更新多くて嬉しみが溢れております。ありがとうございます。(´∀`*) (2017年11月8日 16時) (レス) id: 9f27e32488 (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 蓮花さん» →ところなんですよね()。絶妙な距離感、頑張ります! お風呂はしんどいです笑。 頑張ります! ありがとうございます! 深夜&長文レス失礼しました。 (2017年10月28日 0時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 蓮花さん» コメントありがとうございます。壱から…! お読みいただき感謝です。台本書きではないのであまりこのサイトでは迎合される書き方ではないので、タイプとおっしゃって下さって大変光栄です。ありがとうございます! エロティック…押さえられるようにしなくてはって→ (2017年10月28日 0時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
蓮花(プロフ) - 初コメ失礼致します!!関連ランキングにて、此方の作品を発見しまして、一から全て読ませて頂きました。一言で言うと、どタイプですね。笑 何よりキッドとの絶妙な距離感だとか、少しエロティックな関係性が好きです() お風呂入らないの辛いですよね…頑張ってください!! (2017年10月26日 23時) (レス) id: dd254419fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ