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第156話 ページ20

「っ!? いって――」

そりゃ、傷そのものを舐められたのだ。
空気が当たってるだけでも痛いだろうに、私の舌がふれて余計に痛いのは重々承知の上だ。
私は一度、傷から口を離し「快斗が痛がるのを見るのは久しぶりかもね」と呟く。
彼はただただ悶絶するだけだった。

「〜〜〜〜っ! あああっ、くっそ、いってえええ!!」

確かにこれは痛そうだが、耳元でそう大声で叫ばれては五月蝿い。
私はまた、傷口を舐めた。あんまりこの方法は好きじゃないんだけども……。

そんな私の思いをよそに快斗は痛い痛いと繰り返すのみ。
だが、彼は気づいているのだろうか――出血が止まっていることに。

私は再度、口を離し、タオルで傷口付近の血を拭きとった。
そして自分の胸ポケットからとある薬を一錠取り出した。

「……その薬は?」

痛みに耐えながら、快斗が問うた。
私は一瞬なんと返答しようか逡巡し、小さくため息をついてからぶっきらぼうに「APTX4869」と答えた。

「幼児化させる薬。でも改良版――改悪版かな。使ってみればわかるんだけど」
「まさか、俺に飲ませる――」
「そんなことはしない。私が飲むの」

何故そんな考えに至った。ま、さっきの二つに一つのもう一つの方はまさしくそれなんだが、そんなことはしないしさせない。

「でも、これをやったら快斗はその痛みから解放されると思うんだけど、私の疲労が半端ないから後のことは頼むね」
「……疲労? それってお前がなんか大変になったり――」
「まあ大変になるよ。でもここまでやっちゃったんだし、事情が事情だから……ってもう、そんなこと言ってられる場合じゃないでしょ、やるよ?」

私は意を決して薬を飲む。
ゴクリ、と喉元を過ぎた音をしっかり確認した刹那、私は勢いよく舌を噛み切った。

「!?」「いって……」

驚く快斗と痛がる私の声が重なる。
ボタボタと垂れる私の鮮血、艶やかな赤色。

私は零れる血をべったりと手で掬い、そのまま患部に押し当てた。
それをみてまた驚く快斗。驚くというよりは何をしてるんだといった風。

説明したいが舌を噛み切ったため、うまくしゃべることができない。
ま、状況説明はあとで追ってすればいいだけだし――。

と考えていると、いつも通りのあの動悸。
ドクンドクン、ついでにいうとギシギシと体全体が、軋んで、圧迫されて、ぐちゃぐちゃにされる。
こんな状態にして申し訳ないが自分の方で手いっぱい。

痛みに耐えきれず、私はそっと意識を手放すのだった。

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設定タグ:黒羽快斗 , 名探偵コナン , 怪盗キッド   
作品ジャンル:アニメ
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イヲハ(プロフ) - 優さん» お久しぶりです、いつもコメントありがとうございます! こちらこそ、お読みいただき感謝です。 安定して更新できるようにしてけるように頑張りますのでどうぞこれからもよろしくお願いします。(*^_^*) (2017年11月8日 19時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 最近更新多くて嬉しみが溢れております。ありがとうございます。(´∀`*) (2017年11月8日 16時) (レス) id: 9f27e32488 (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 蓮花さん» →ところなんですよね()。絶妙な距離感、頑張ります! お風呂はしんどいです笑。 頑張ります! ありがとうございます! 深夜&長文レス失礼しました。 (2017年10月28日 0時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 蓮花さん» コメントありがとうございます。壱から…! お読みいただき感謝です。台本書きではないのであまりこのサイトでは迎合される書き方ではないので、タイプとおっしゃって下さって大変光栄です。ありがとうございます! エロティック…押さえられるようにしなくてはって→ (2017年10月28日 0時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
蓮花(プロフ) - 初コメ失礼致します!!関連ランキングにて、此方の作品を発見しまして、一から全て読ませて頂きました。一言で言うと、どタイプですね。笑 何よりキッドとの絶妙な距離感だとか、少しエロティックな関係性が好きです() お風呂入らないの辛いですよね…頑張ってください!! (2017年10月26日 23時) (レス) id: dd254419fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イヲハ | 作者ホームページ:(*/□\*)  
作成日時:2016年11月5日 22時

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