第８５話 ページ43
「おい、あれ成沢文二郎じゃね？」
「眠りの小五郎がいるよ!」
「あの人って……」
乗客はこんな状況だというのに、二階席から降りてきたスターに関心を寄せていた。
アナウンスも代替空港の千歳空港に向かっている、って言ってたから一般客は事の大きさに気づいていないのだ。まさか機長と副機長が意識不明で高校生と小学生の少年らが操縦しているなんて夢にも思わないだろうし。
千歳空港、ね。
私は窓から身を乗り出すように、外の景色を覗き込む。
日本の地理にはそこまで詳しくないもので、本当に千歳に向かってるかどうかは私には判断がつかないけれど、一つだけ確信していることがある。
悲劇はきっとあれだけでは終わらない。
きっと、もっと、なんかすごい悲劇が待っていそうだ。
例えばそう――燃料があと少ししかないとか。
例えばそう――埠頭とか、そこらへんに着陸を試みているとか。
まあ、ないか。
そんなフィクションみたいな話、あるわけないよ、ね……？
私は不安を払拭するかのようにのめり込んで窓の外を眺めた。
機外には白鳥大橋と室蘭港が点々と明かりを灯していた。
＊ ＊
「何かヤバそうなんで俺は先に降りるぜ!! グットラック!!」
俺は与圧を下げるスイッチを押してから、混乱する探偵君達を背にコックピットから出て行った。
そしてついてきた一人のお嬢様に「何かに掴まっていろ」と指示をだし、ドアを開ける。
開けたと同時にドアは気圧の変化に耐えられなくなり、ゴオォッという激しい音を立てて吹っ飛び、遮蔽物を失ったことで外気が一斉に入ってきた。
お嬢様は当然、外気に怯み瞼を閉じ「キャアァァッ」と叫んだ。
その隙に俺は――変装をといて『怪盗キッド』になる。
「えっ!? 怪盗キッド!!」
「では御嬢さん、またいつか月下の淡い光の下でお会いしましょう」
「あ、はい……」
「失礼☆」
束の間の出来事だ。
お嬢様は動じることすらできず、頬を微かに赤く染めながらただただ、飛行機から飛び降りる俺を見送った。
崎守埠頭に何も明かりがないのは誤算だった。
あんな暗いところに着陸できるわけがない。
だから俺がとっておきのマジックを披露してやるんだ。
――パトカーの光で滑走路を創る。
今はきっと探偵君たちは俺のことを批判してるんだろうな。
でもすぐそれを感謝に変えてやる。
探偵君に恩を売るのも悪くねーし、まだ機内にAも残ってるしな。
『あの飛行機、墜落なんてさせてたまるか！』
そう、闇夜に誓った。
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レモン - 楽しく読ませていただいてます！特に、66の怪盗＆探偵の言い回しが好きです！ (2020年7月30日 19時) (
レス) id: 91878b848e (このIDを非表示/違反報告)
欠月(プロフ) - ありがとうございます！イヲハさん、神ですね！(泣) (2017年4月16日 21時) (レス) id: 3f5aeeaaec (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 欠月さん» コメントありがとうございます。私はバーボンの方が好きですｗ。赤井さんはちょっと完璧すぎるので…。赤井さん派多いですよね……。この作品にもちょいちょいバーボンを出せるように頑張ります。 (2017年4月16日 21時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
欠月(プロフ) - イヲハさんもバーボン好きですか？私は大好きです！でもでも、友達みーんな赤井派なので、イヲハさんがバーボン派で良かったです！ (2017年4月16日 17時) (レス) id: 3f5aeeaaec (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - のんのさん» コメントありがとうございます。そうなんですか……コナン好きは多いと思うのですが汗 楽しんで頂けたら何よりです！ (2017年4月9日 2時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
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