【怪盗キッド】奇術師と道化師 弐

第７９話 ページ37

「和菓子と洋菓子、どっちになさいますか？」

自分で言うのもあれだが、結構様になってきたと思う。
客室乗務員ってたくさんやることあって大変だな〜と感じつつ、少しずつ仕事をこなしていく。

ちなみに本物の三沢乗務員は、一階席の一番目立たない席に寝かせている。
有事の際というかイレギュラーが起きた時には本物の三沢乗務員じゃないとやばいからね……。

「どちらもいらないわ……。飲み物も結構……」

樹里さんは気怠そうに答えた。
右手の薬指に光る宝石――スターサファイア。
なかなか綺麗で美しい宝石である。まだ本物かどうかわからないけど。

「私はビールとおつまみを……」

樹里さんとは打って変わって、毛利探偵は上機嫌でそう要求した。
和菓子か洋菓子って聞いてんだろ？ と一瞬苛立ちを覚えたがそんな下らない事で表情を崩す私ではない。

「少々お待ちください……」

私は営業用の笑顔で快諾し、その場を離れビールを取りに向かった。
樹里さんと毛利探偵は前の席なので当然、その場にいる全員の横を通ることになる。

スーパーシートに浮かれる少年探偵団。
次の役や仕事をこなしつつ、パーティを楽しみに待つ役者達。
怪盗を警戒する名探偵と見たことあるあの子。
そして、新庄さんに成りすました快斗さん。

快斗さんに客室乗務員に化けることは伝えたが、誰に化けるとは言っていない。
もしかしたら私って気づいてないかも、と思いつつ快斗さんの横を通過した。


「ビールとおつまみ、お待たせいたしました」

私はビールとつまみを探偵に提供するとすぐにその場を離れた。
仕事を円滑に進めたいという一心もあったし、匂いだけで酔ってしまったらどうしようもないもので。

次は少年探偵団くん達か。

「洋菓子と和菓子、どちらになさいますか？」

「歩美、洋菓子!」
「僕も洋菓子でお願いします」
「俺は両方!!」
「私はいらないわ」
「僕も大丈夫」

なんだかこの子達は温度差がすごいな。
っていうかまてまて、両方っておい。
無茶な要求は軽くスルーしてテキパキとワゴンからお菓子を提供する。

「お飲み物は何になさいますか？」

すると子供たちは口を揃えて「ジュース！」と答えた。
私は「畏まりました」と頷き、名探偵君たちの方に視線をやる。

「坊やは？」
本来敬語であるべきだが、なんだかめんどくさくなったので適当になりつつある。

「僕、いらな〜い」
「私も」

なんだかこの二人は大人びている。
そりゃコナン君は中身高校生だもんね。

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