第68話 ページ26
指示通り進むとちゃんとあった。
Aのことだからワザと誤誘導して俺に迷惑かけるかと思ったがそんなことはなかった。
ゴトン、という何かが動く音が前方から迫ってくる――そう電車。
俺は高度を下げハンググライダーから自分の体を外し、電車の上に華麗に着地した。
そしてハンググライダーを探偵にばれないように空へ放す。
「ゆりかもめ、乗るの初めてだ」
「できれば次は車内に乗ってくださいね」
ふざけた会話をしていると探偵君もゆりかもめに乗ってきた。無論車上だけどな。
「もう逃げられないぜ!! 怪盗キッドも空を飛べなくなったらただのコソ泥だ」
完全に探偵君は勝ったと確信していたようだった。
さながら今朝のAみたいに。
俺は心の中で笑った、嗤った、哂った!
俺は好きだ。
今の探偵君のように、今朝のAのように、いつもの警部のように。
――「勝った」と思った人を出し抜き、騙し、敗北へと導くことが。
俺は大好きだ。
「元の怪盗に戻らせてもらおうかな」
俺が意味ありげに言うと、探偵君はハッとしたように夜空を見上げた。
探偵の目線の先――つまり俺の頭上には空に放しておいたハンググライダーがある。
「しまった!」
探偵君はそう叫び、俺のもとに駆け寄ってきたがもう遅い。
「じゃあな」
探偵君が俺にぎりぎりに近づいたところで別れを告げボタンを押した。
みるみるうちに俺の体は上昇し、ハンググライダーに掴まる。
「クソッ」と今日何度目だか分からない探偵君の悔しがる面を拝んでから、風上に向かって飛行し都会のネオンが輝きつつも暗く静まった闇夜に紛れて、家へと向かった。
ところで探偵君はどうやって降りるのだろう?
* *
「電車じゃないですよー」
私は帰ってきた家の主におかえりも言わず、そんなことを言う。
彼も彼とてただいまと言わず、「え?」と聞き返した。
「ゆりかもめ――ゆりかもめ東京臨海新交通臨海線は電車じゃないんですよ」
「じゃあモノレールなのか、あれ?」
「それも違います。ゆりかもめはゴムタイヤで動いてます、つまりバスですあれ」
「そうなのか……知らなかったぜ」
そんな会話に花を咲かせている場合ではなかったが、このゆりかもめトークは何故だが分からないが盛り上がってしまった。
現実逃避と言うか、一仕事終えたからやはり別の事を考えたいと言う心理なのだろうか。
快斗さんと出会って以来、こんなに話が弾んだことがあるのだろうかってくらいだった。
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レモン - 楽しく読ませていただいてます!特に、66の怪盗&探偵の言い回しが好きです! (2020年7月30日 19時) (レス) id: 91878b848e (このIDを非表示/違反報告)
欠月(プロフ) - ありがとうございます!イヲハさん、神ですね!(泣) (2017年4月16日 21時) (レス) id: 3f5aeeaaec (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 欠月さん» コメントありがとうございます。私はバーボンの方が好きですw。赤井さんはちょっと完璧すぎるので…。赤井さん派多いですよね……。この作品にもちょいちょいバーボンを出せるように頑張ります。 (2017年4月16日 21時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
欠月(プロフ) - イヲハさんもバーボン好きですか?私は大好きです!でもでも、友達みーんな赤井派なので、イヲハさんがバーボン派で良かったです! (2017年4月16日 17時) (レス) id: 3f5aeeaaec (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - のんのさん» コメントありがとうございます。そうなんですか……コナン好きは多いと思うのですが汗 楽しんで頂けたら何よりです! (2017年4月9日 2時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
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