第65話 ページ23
名探偵が怯んだ隙に俺は一目散にエレベーターへと向かった。
そして、切っていたインカムを再起動させる。
「A、準備できてるか?」
「大丈夫ですよーっと」
インカム越しにカタカタとキーボードを打つ音が聞こえた。
俺がエレベーターホールに着いたと同時に俺を迎え入れるかに様にドアが開いた。
まあAにプログラミングだか何だかやってもらったので当然っちゃ当然だが。
「待て!!」
名探偵はそう叫んだが、待つわけなどない。
今度は名探偵がついたと同時に、ドアが閉まった。
「クソッ!!」
俺は名探偵の悔しがる声を聞いてからR階のボタンをすばやく押した。
* *
劇場『宇宙』。屋上。
Hと書かれたヘリポートの上に快斗――もとい怪盗キッドは逃げも隠れもせず、立っていた。
いや待っていた、名探偵を。
そんな彼の後方から息をあげながら、一人の少年が屋上に現れた。
名前は言うまでもない江戸川コナン――もとい工藤新一。
現れた探偵に怪盗は何も言わなかった。
口火を切ったのは探偵だ。
「もうゲームは終わりにしようぜ、コソ泥さん……」
ニヤリと笑いながら探偵は一歩、また一歩と怪盗に近づいた。
すると怪盗は振り返り、静かに「そうだな……」と肯定する。
「キミとかくれんぼするには日が暮れすぎたよ……名探偵」
キザな台詞とともに警備員は一瞬のうちに『怪盗キッド』になった。
白いマントを翻し、単眼鏡からぶら下がった飾りが風に靡いている。
甘い声とは裏腹にその目にはギラギラとした野望のような何かが宿っていた。
「軽口叩けんのも今の内だ……そろそろケリをつけようじゃないか」
「ああ、恋人が夕飯作って待っているからな」
怪盗はスッと手を顔の前に回し口元を隠す。――刹那。
『コナンくーん!』
――それは探偵にとって聞き覚えのある、いや聞き覚えがありすぎる声だった。
その声は探偵にとっての一番大切な人――
「蘭!?」
その声の主を探偵は口走る、そして背後に視線をやった。
『夕飯できたよー!!』
――しかし彼女の姿などなかった。
『早く来ないと食べちゃうよー!!』
もう一度探偵が怪盗の方を見ると、彼の口が動いていた。
怪盗キッドは変装の達人であり、誰の声でも出せる――探偵の恋人の声ですら。
動揺する探偵に怪盗は構えたトランプ銃を向け一発撃つ。
スペードのAは探偵の足元へ真っ直ぐ撃ち放たれたが探偵は躱した。
――漆黒の摩天楼にて探偵と怪盗の戦いの始まり始まり。
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レモン - 楽しく読ませていただいてます!特に、66の怪盗&探偵の言い回しが好きです! (2020年7月30日 19時) (レス) id: 91878b848e (このIDを非表示/違反報告)
欠月(プロフ) - ありがとうございます!イヲハさん、神ですね!(泣) (2017年4月16日 21時) (レス) id: 3f5aeeaaec (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 欠月さん» コメントありがとうございます。私はバーボンの方が好きですw。赤井さんはちょっと完璧すぎるので…。赤井さん派多いですよね……。この作品にもちょいちょいバーボンを出せるように頑張ります。 (2017年4月16日 21時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
欠月(プロフ) - イヲハさんもバーボン好きですか?私は大好きです!でもでも、友達みーんな赤井派なので、イヲハさんがバーボン派で良かったです! (2017年4月16日 17時) (レス) id: 3f5aeeaaec (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - のんのさん» コメントありがとうございます。そうなんですか……コナン好きは多いと思うのですが汗 楽しんで頂けたら何よりです! (2017年4月9日 2時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
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