第64話 ページ22
「何もかも懐かしい……あの輝かしい日々……ボナパルト…」
どうやら舞台は佳境に入ったようだ。
このシーンに至るまで何度も『スターサファイア』が無防備にも観衆の前に曝け出されたが、見る限り本物か偽物かは判断できなかった。
もう十分あの探偵君の気は惹きつけられたし、腹が減ったので帰りたいっていうのが現状だった。
ただ一つ心配なのは中森警部と毛利探偵――俺を捕まえる秘策ってなんだ?
あのへっぽこ警部とへっぽこ探偵如きにゃあ俺を捕まえられねーだろうけどよ。
秘策っていうか迷策っていうか、極論的にいえば失策になるだろうけど。
万が一ってこともあるから警部達の動きは確認して……それから帰るか。
にしても、俺を捕まえる秘策――ん?
不意に舞台を見るとなんと驚くことに中森警部と毛利探偵が居た。
教皇の隣に、普通に居た。
ていうか、舞台に出てた――そんなのアリぃ?
まあこれで警部達の方の不安も払拭されたし、帰ろう。
あんなのホントに失策じゃねえか。
探偵君を見ると彼も呆れた顔をしていた。――はは、同感だよ。
おめえも俺も大変だな、と思いつつ彼にピースサインを送った。
当然、探偵君は目敏いのでそれに気づいたようだ。
彼に追いつかれないように素早く劇場内から出た。
そして人目のない通路でそこら辺の警備員に変装する。
少し歩くと、曲がり角で探偵君とほかの警備員が何か話していた。
――挑発して帰るか、からかってやろう。
「どうかしましたか!?」
「ああ、このボーズが角から飛び出してきて……」
探偵君は俺をじっと見つめていた。おおっとばれたかな?
「大丈夫かい? ボウヤ……」
まだばれていないと信じてみる、ばれててもいいんだけどさ。
「うん大丈夫だよ!! でもお兄さんの警棒かっこいいね……こっちのおじさんよりのも長いんじゃない?」
「ホントだ随分長いな」
「まあ警棒にもいろいろあるから」
なんて言い訳してみたけど、そろそろばれそうだ。
探偵君はニコニコしながら警棒の規定を語りだした――なんでんなもん知ってるんだよ。
「ねえ……どうして?」
小学一年生のくせに――いや高校二年生のくせに凄味のある声だった。
キメ顔ならぬ、キメ声ってところか。
俺は一瞬、焦ったふりをしてその指摘された警棒を顔の前に持つ。
「どうしてこんなに長いかっていうとそれは……警棒じゃないからだよ!!」
カチッというスイッチが入ったと同時にカアッと警棒が発光し、周囲がまばゆい光に包まれる――
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レモン - 楽しく読ませていただいてます!特に、66の怪盗&探偵の言い回しが好きです! (2020年7月30日 19時) (レス) id: 91878b848e (このIDを非表示/違反報告)
欠月(プロフ) - ありがとうございます!イヲハさん、神ですね!(泣) (2017年4月16日 21時) (レス) id: 3f5aeeaaec (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 欠月さん» コメントありがとうございます。私はバーボンの方が好きですw。赤井さんはちょっと完璧すぎるので…。赤井さん派多いですよね……。この作品にもちょいちょいバーボンを出せるように頑張ります。 (2017年4月16日 21時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
欠月(プロフ) - イヲハさんもバーボン好きですか?私は大好きです!でもでも、友達みーんな赤井派なので、イヲハさんがバーボン派で良かったです! (2017年4月16日 17時) (レス) id: 3f5aeeaaec (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - のんのさん» コメントありがとうございます。そうなんですか……コナン好きは多いと思うのですが汗 楽しんで頂けたら何よりです! (2017年4月9日 2時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
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