第63話 ページ21
『――って感じなんだけど、大丈夫そうか?』
「ええ、そこからならセキュリティも大したことありませんし舞台中なら人通りも疎らですしねえ」
『OK、じゃあ劇が始まるから切る。逃げるときにまた連絡する』
「了解しましたー」
最低限のマナーはあるんだ。私は無いけれど。
さて彼が逃げ出すまでどうやって隠蔽工作をしようかと私はあれこれ考えだした。
午前中、冗談半分とはいえ殺そうとした相手を。
守ろう護ろう、なんて矛盾しているけれど。
快斗さんのお父さん――『黒羽盗一』さんには大きな借りがあったから。
快斗さんを守ろうと思うのは当然というか恩返しというか。
もしかして自己満足? それでもいいや。
大丈夫、彼をこっちサイドに堕とさせやしないんだから。
* *
ブーという開演を告げるブザーが劇場内に鳴り響いた。
劇に期待し、高揚した観衆の歓声が一気に止む。
流石名女優の舞台の千秋楽、劇場は超満員で座席は勿論全席埋まっている。
俺は一階の出口付近の壁に寄り掛かった。
辺りを見回すと、名探偵を見つけた。
彼の愉快な仲間たちは二階席に座って劇を開始を今か今かと待ち望んでいる最中だった。
しかし名探偵は違った。
厄介なあの追跡眼鏡を起動させ、俺をしっかりマークしていた。
もう劇場内の電気は消灯させられていたので、探すのにも苦労するだろうななんて思っていたけど彼はわざわざ、眼鏡を赤く光らせ、暗闇対策をばっちりしていた。
今日は何も盗まねえんだ。
挑発はするけれどもあとは何もしない。
そんなに気ぃめぐらせてると疲れちゃうぜ? 探偵く〜ん。
そんなことを思っているとついに幕が開き劇が始まった。
音楽とともに役者が踊りだし、如何にも王宮の舞踏会といった感じだった。
劇自体にあまり興味はない。『スターサファイア』早く出てこねえかなあ。
まあこっから見ても、偽物か本物か見分けるのは厳しいな〜ァ。
劇が佳境に入ったあたりで逃げるか。
そう決めて、俺は目を閉じて考え事をする。
何せあと1時間暇だからな。
『ダメダメ!』
昼間、Aが叫んでいたのを思い出す。
そんなに俺の考えを否定するのは珍しかったけど、なんかこう別の理由があるんじゃねえか?
例えば……なんだろうな、わかんねえや。
あいつが教えてくれない限り分かんねえよな。
教えてくれるのを待つ――違うな、いや違わないか、うん?
こんなこと考えたって無駄だな、と思って俺はそこで思考を打ち切る。
さあ今は、仕事に集中だ。
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レモン - 楽しく読ませていただいてます!特に、66の怪盗&探偵の言い回しが好きです! (2020年7月30日 19時) (レス) id: 91878b848e (このIDを非表示/違反報告)
欠月(プロフ) - ありがとうございます!イヲハさん、神ですね!(泣) (2017年4月16日 21時) (レス) id: 3f5aeeaaec (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 欠月さん» コメントありがとうございます。私はバーボンの方が好きですw。赤井さんはちょっと完璧すぎるので…。赤井さん派多いですよね……。この作品にもちょいちょいバーボンを出せるように頑張ります。 (2017年4月16日 21時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
欠月(プロフ) - イヲハさんもバーボン好きですか?私は大好きです!でもでも、友達みーんな赤井派なので、イヲハさんがバーボン派で良かったです! (2017年4月16日 17時) (レス) id: 3f5aeeaaec (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - のんのさん» コメントありがとうございます。そうなんですか……コナン好きは多いと思うのですが汗 楽しんで頂けたら何よりです! (2017年4月9日 2時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
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