第53話 ページ11
「なぁ! ちが、ちがうし!」
慌てて否定すると、彼はまたニヤリと黒い笑いを作り、また、耳に息を――。
「〜〜!」
声にならない声で悶絶してしまう。
「かっわいー」
そう言われ、顔がさらに赤くなっていくの自分でも分かる。
ジタバタと足を動かし何が何でも目の前のこいつをどかそうと思った。
だって、そうしないと、おかしくなりそうで――。
――――ドクン! と。
突如、心臓が大きく動悸した。
その激しい動悸で私は我に返る。
よかった、解毒作用が働いてきたみたいだ。
でも、いつも以上に心臓の音が激しい気がする。どうしてだ。
一瞬自分の中で出してはいけない答えが廻った。
違う! 違う! と押し付け、体中を引き裂くような痛みを味わいつつも彼のことを考えるのをやめた。
白い煙が晴れるのとともに自分の肢体が大きく、19歳の体に近づいてくのを認識しつつ必死に理性を保つ。
これ以上求めちゃダメなんだし。求められてもダメなんだ。
「――は、もーびっくりしましたよ〜」
何事もなかったかのように19歳の私は振る舞った。
すると、彼は少し唖然したもののすぐにまたさっきの顔に戻った。
フッ……と謎めいた笑みを浮かべ、私の背に手を伸ばす。
また何かされるのか、と嫌な予感がしたがそれは杞憂だったようで、彼はただ私の体を起こしただけだった。
ホッと胸をなでおろし、安堵したのも束の間。
彼は又もや顔を近づけ「何かされるかと思った?」と訊いてきた。
「――ッ!」
返す言葉もなく、ボッと顔が火を噴くようにさらに赤くなるのが自分でもわかった。
もういっそ泣きたいぐらいだった。
なんというか、屈辱的で雪辱的で、戦ってもいないのに負けている気分だった。
なんなんだこれは。
夢なのか? 悪夢なのか?
――そうだったら早く覚めてくれ。
「か、快斗さん。熱でもあるんですか?」
ようやく言葉を吐き出せたかと思えば、そんなくだらない言葉。
いつもならこれで調子に乗って弄り倒せるのだが、今日は違う。
立場が完全に逆だ。
彼は。
彼は目を大きく見開き、大きく息を吸って――
「ハハハっ! あー面白かった!!」
笑いだした。
さっきまでの黒い笑いや妖艶な笑みとは違い、純粋な笑顔。
開いた口が塞がらないし、肩すかしにあった気分だ。
「It is acting!?」
「いや〜なっかなか面白い反応だったよ、じゃあ行ってくる」
青子のことよろしくな、なんて言って彼は大きな花束を抱えて何事もなかったかのように家から出て行った。
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レモン - 楽しく読ませていただいてます!特に、66の怪盗&探偵の言い回しが好きです! (2020年7月30日 19時) (レス) id: 91878b848e (このIDを非表示/違反報告)
欠月(プロフ) - ありがとうございます!イヲハさん、神ですね!(泣) (2017年4月16日 21時) (レス) id: 3f5aeeaaec (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - 欠月さん» コメントありがとうございます。私はバーボンの方が好きですw。赤井さんはちょっと完璧すぎるので…。赤井さん派多いですよね……。この作品にもちょいちょいバーボンを出せるように頑張ります。 (2017年4月16日 21時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
欠月(プロフ) - イヲハさんもバーボン好きですか?私は大好きです!でもでも、友達みーんな赤井派なので、イヲハさんがバーボン派で良かったです! (2017年4月16日 17時) (レス) id: 3f5aeeaaec (このIDを非表示/違反報告)
イヲハ(プロフ) - のんのさん» コメントありがとうございます。そうなんですか……コナン好きは多いと思うのですが汗 楽しんで頂けたら何よりです! (2017年4月9日 2時) (レス) id: da7fe4e2aa (このIDを非表示/違反報告)
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