【怪盗キッド】奇術師と道化師

第35話 ページ40

怪盗キッドが展示台の上に降り立つと歓声のボリュームが上がる。
私は昨夜同様、テレビスタッフから離れ、瞬間移動の準備を始める。

――今、屋上のドアが開いた気がする？ 気のせいか……。

「我が肢体が時空を超える様をとくとご覧あれ」

やばっ、急がなきゃ。
私はあわてて仕掛けをする。

「よし始めてくれ」
「行くよっ！」

私は昨日と同じく垂れ幕の中にダイブする。
昨日なんか思い出に浸れたのはもしかしたらただの走馬灯かもしれないなーってことを今日は考えてみる。

「一発目！ スリー・トゥー・ワン！ ハッハッハッ」

『――ゼロ』

「！」「!?」

『残念だが今夜のマジックショーの報酬はゼロだぜ、月下の奇術師さんよぉ』

この声は…――江戸川コナン！
私の位置から確認することはできないが屋上にいるのだろう。
さっきのドアが開いた気は気のせいじゃなかったのか……失態だ。


なんて考えているとキッドが「重りを捨てろ！」と切羽詰って言う。
私は「え？」と聞き返したものの「はやく！」と彼が急かすので慌てて砂袋を捨てる。

すると下降が止まった――キッドが糸を引っ張って止めてるんだね。
このままキッドが上に行けば江戸川コナンに捕まる。
ただキッドが下に行けば私が捕まる、成程お手上げかもね。

上から江戸川コナン――いや工藤新一の推理が聞こえてきた。
う〜ん生推理、最高。今そんな事考えている場合じゃないけど。

さっきの瞬間移動の件はフェイク……まあ失望しないですんだけど？

「ミステリアスだろ？」
何を血迷ったかキッドは文字ニュースの中央で黒いマントを脱ぎ捨て純白の衣装を晒した。
当然観客は食いつく。

「すごい！」「ビルの壁に立ってるよ！」

「まあ観念するんだな――」
私が考えていたことと同じことを工藤新一はキッドに説く。
確かにやばいんだよね〜キッドが捕まることもやばいけど私が警察に捕まるのもかなりやばい。
なんか逆転の一手……ないのかな。


「んじゃ真ん中で」

「!?」「は？」
当然、私と工藤新一は驚愕する。
真ん中？ 真ん中って――――

するとキッドはお得意のトランプ銃でワイヤーをビルの柵から切り落とした。
私は咄嗟に垂れ幕に抱き着いたが続いて垂れ幕の糸も撃ち落したのでなす術なく――

「手を伸ばせっ！！」

脳が理解する前に体が反応しめいっぱい手を伸ばす。
するとキッドは私の手首をがっしり掴み、マントをハンググライダーに変えプロペラを回した。

「うわっ！」

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