【怪盗キッド】奇術師と道化師

第23話 ページ26

目が覚めると快斗さんが私の上にいた。なんというか仰向けの私を覆いかぶさるような感じで。
何が起きたのかわからないが、なんとなく察しはついてしまった。

まだ頭がぐわんぐわんする。
やっぱり昨日飲んだのはお酒か、次からは気を付けないと。
酔っぱらうと私はなにするかわかんないからなと心の中で反省する。

「快斗さん起きてくださいー」
自分が起きようにも、乗っかっている快斗さんが邪魔だ。

「快斗さーん、快斗さーん」
ペチンと頬を何度か叩いてみるが俄然起きる気配はない。ふむ、困った。

そーだ。
私は2、3回咳払いして少し深く息を吸った。
そして――

「かぁいとぉー！ いつまで寝ているの！ おきなさーい！」といった。
もちろんこれは私――『琥珀A』の声じゃない。
『中森青子』の声だ。

前に聞いた声をトレースしてみた。
女性の声なら何とかなりそうなので、次は男性の声にも挑戦してみたいものだ。

「かいとー！ 起きろって言ってるでしょぉ！」
そういった後、快斗さんはゆっくり目を開けて「青子ぉ？」といった。

瞼をこすり、ふあぁと口を大きくあけ欠伸をする快斗さん。
「なんで青子がここにいるんだよ」
寝ぼけ眼で私をみる。

「って青子じゃなくてA！？」
一気に目が覚めたような快斗さん。
なぜか私を見て顔を真っ赤にさせた。
――私の嫌な察しが当たったのかもしれない。

「昨日はよくわかりませんが、すみませんでした」

本当は埋まる勢いで土下座したかっが、まだ快斗さんが私の上にいる状態なのでそれは無理。
快斗さんは私を見て目をそらし、頬をポリポリとかき「いやぁ俺も気持ちよかったからよぉ」なんて言っていたが聞こえなかった。

断じて聞こえなかった! 何も聞いていない！ 気持ちよかった(意味深)なんて聞いていない！

「と、とりあえずそこどいてください」
「あぁ。くっ〜こんな格好で寝たから体がいてぇ〜」

私は心が痛いです、と言いたかったけど言わなかった。


　＊ ＊

「快斗坊ちゃま、Aさん、昨日は大丈夫でしたか？」
ブルーパロットに着くなり寺井さんが聞いてくる。

「でーじょうぶだったよ」「色々アウトでした」
完全に二人の回答に矛盾が生まれたが、寺井さんはスルーした。
なぜだ。

「じゃ今日の準備をするぞ……っとまずは」
快斗さんはパソコンを立ち上げワードを起動させる。

「何してるんですか？」
「それはおったのしみ〜」
ケケケっ〜とニヒルに笑う彼。
今日のショーも楽しみだ。

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