【怪盗キッド】奇術師と道化師

第19話 ページ22

その予告した当日――鈴木大博物館前にて。
いくら土曜とは言え、こんなに大勢の人がいるとは夢にも思わなかった。
博物館前の大通りはあたかも歩行者天国のように人、人、人で犇めき合っている。
一応検問はあるがほとんど意味をなしていないだろう。

大体の人はキッドと似たような格好――コスプレをしたり、「キッド頑張れ！」などと書かれたプラカードを掲げたりと、所謂ファンだった。
その中に紛れて、警備員や私服警察官、そしておそらく鈴木財閥が独自に雇ったSPやそれに準じた鈴木財閥精鋭部隊の人もいた。ははん、データ通りだね。

私はとりあえず19歳の身体に戻り、キッドファンになりすましてこの騒ぎのの中にいる。
別に私は変装の必要はないので(流石に白髪だと違和感があると思うから髪を黒に染める程度のことはした)素顔で堂々といることにした。

ファンか警察かは眼と表情ですぐわかる。
いくら私服警察官でもそんなお堅い表情じゃ、す〜ぐわかっちゃうよ？
なんて調子こいていた時。

私は誰にも気にも留められない様に「あっ」と声を漏らした。
――江戸川コナンもとい、工藤新一を発見した。
もちろん、あっちは私のことに気づかないし気づいたところでどーにもならない。
けど、快斗さんに言われている。

『名探偵をもし見つけたら位置や行動を常に教えろ』と。
まあ快斗さんがそれほど江戸川コナンを警戒視してるってことだろう。

「キッドさーん？ 我が愛しの工藤新一様を発見しました」
インカムで快斗さんと寺井さんとの疎通を図ってみる。
少しノイズ交じりだか、返事が聞こえる。
「言い方がうぜえ……で？ どこら辺にいるんだ？」
「あの映像が集まる車の中だね、なんとかの小五郎もいるから勝手に警備とか参加できるんじゃない？」
「オーケィ、まあ地上にいる探偵君なんかに――大空を優雅に歩く俺を捕まえられるわけねーよなぁ」

その言葉を聞いて自然と彼の笑みが見えた。そうだね、彼の言う通りだ。
我が愛しの工藤新一様はどうでるのかしら？
心の中でふふ、と嗤う――私。

周囲の『キッド！』という歓声が大きくなっていた――もうすぐ予告の時刻。

『……ま、……、――です』
インカムから寺井さんの声が聞こえた、ノイズがひどくて聞き取れないがきっと快斗さんに向けた何かの合図だろう。

『んじゃ〜ショーの初日を始めるとすっか！』
その楽しげな声が聞こえた直後、鈴木大博物館の上空に

――月下の奇術師、もとい怪盗キッドが姿を現した。

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