【怪盗キッド】奇術師と道化師

第10話 ページ12

がちゃり、とドアが開く音が聞こえ、私は準備を最終段階へ移行した。
といっても考えた案を脳内でシュミレーションするだけだが。

ふぅっと静かに深呼吸をして、タイミングを伺う。

足音が近づいてくるのを確認してゆっくり、物音が鳴らないように銃を構える。
……何か気配を感じる、目だけを動かし自分の背後を確認――

「動くな」
「――！ What!?」

手首をつかまれ、床に叩き付けられる。
まさか『あの人』たちにばれ――
咄嗟の判断で足を普段は曲がらない方向にあげ反撃を試みる。
が、空ぶった、足も捕まれまるでプロレス技にでもかけられているような体位になった。

「誰だっ！」
「いや誰ってお前よぉ。ただのさっきの仕返しなのにそんなにムキになんなくったって」
「か、快斗……さん？」

そこにはキッドの格好をした快斗さんがいた。
ひょいと私を持ち上げ、逆さにする。
私に為す術などなかった。

「ざまーみろ。えっとA……さん？」
「……」
「言っとくけどおめーがやったことを俺はやり返しただけだからな」

あたかも勝ち誇った表情を浮かべた彼。
なんだか無性にとてもムカついたので金的をめがけて蹴りを入れる

「っぶね！ 何すんだよ！！」

外れたか……。
まあこんな吊るしあげられてる状態じゃしょうがないか。

「足が滑ったんです」
「このやろっ……懲りねーなぁ！」

「それより、玄関から入ってくる足音はなんだったのですか？ 私はあの足跡の主が貴方だと思ったのですが」
「ん？ あぁジイちゃんだよ」

快斗さんがジイちゃんの名前を出したのと同時に寺井さんがリビングに入ってきた。

「か、快斗坊っちゃま！ そんな年端も行かない少女にその様な……」

あらいい人っぽいおじーちゃんだこと。
まあ年端もいかないって私、19歳なんだけどね、うーんどうせ寺井さんからしてみたら変わらねーな。

「いーんだよ！ こいつこー見えて好戦的だし」

とは言ってもと寺井さんが反論する。
この2人って本当使用人と坊ちゃんって感じだねぇ。寺井さん苦労してるんだろうな……。

「それで、Aさんよぉー？ おめーは一体何なんだ？」
「人間です」 私はキメ顔で言った。
「いやそーゆーこと言ってんじゃなくて……」

ふふん、と満足気に私は笑う。
対照的に快斗さんはあ〜っと声を出しながら頭を掻きむしった。

やれやれと寺井さんはため息を漏らしたあと核心をつくことを聞いてきた。

「何故、快斗坊っちゃまがキッドだということを見抜けたのですか？」

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