【怪盗キッド】奇術師と道化師

プロローグ ページ1

≪怪盗キッドの予告時間まで残すところあと3時間となりました!!≫

≪今回狙われたのは、鈴木財閥が所有する――――≫

そこまで聞いて、私は携帯の電源を落とす。
ワンセグでニュースでも見ようかと思ったがどこの局もこんな調子。

『怪盗キッド』『怪盗キッド』ばかり。

おまけにこの空港内にある大画面のテレビにも同じニュースが流れている。


≪さあ、ここからはキッドが今まで起こした華麗な奇跡をVTRでお届けしたいと思います！≫


……なんだこれ、犯罪者の肩を持つテレビ局か。
日本は平和だねえ、怪盗ごときでこんな大事のニュースにするなんて。
軽い怒りと嫉妬と妬みで左手に持っていたジャグリング用のボールをぎゅっ、と強く握った。



テレビではその怪盗キッドがキザな笑みを浮かべていた。
顔を見る限りやはり――似ている。

あの名探偵に。



まあお手並み拝見だね、怪盗キッド……さん？
I want to check how great you are……


人が行き交う空港内。
どうやら子供一人じゃ浮くようでちらほら視線を感じる。

さて、と思い時計を見る――14時12分、あの人との待ち合わせ時間が迫っている。

私は背後を気にしながら今まで以上に帽子を深くかぶり、空港内のとある場所へと向かった。

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