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『……えっと、結婚の話はどこに……』
「あ、そ、そうでしたね、ごめんなさい」
恥ずかしそうにAさんは笑って、俺を見た。
「…あー……結婚……してませんね。そろそろしたい頃なんですけど、お相手が中々いなくて」
Aさんは少し寂しそうにそう呟いて、鍋に俺が切った野菜を入れる。
こんな美人さんなのに、結婚してないんや。
まあでもいいとこのお嬢さんって感じもするし……親がすすめた相手と結婚する、とかありそうやけど。
「センラさんは彼女さんとかいらっしゃらないんですか？」
『いたら彼女に家事代行頼んでますよ』
そう言うと、Aさんは苦笑して「かっこいいのに」なんて嬉しいことを言ってくれた。
それはあなたもですよ、と心の中で呟いて俺も小さく笑う。
『…あ、そうや。こんなのってどうですか？』
俺の言葉にAさんは「？」と首を傾げて、俺を見た。
『お互い恋人とかいないんですし、今度一緒に食事でもしませんか？いつものお礼も兼ねて……どうです？』
「お、お礼って、いつもお金を頂いて家事代行とかをしてる訳ですし……悪いですよ」
『そんなん気にせんでええのに。じゃあお金出したら行ってくれますか？』
「そ、それはもう別のお仕事になっちゃいますから！！」
『じゃあ行きましょうよ』と笑いかけると、Aさんは少し頬を赤くして押し黙ってしまった。沈黙は肯定、と受け取っていいのだろうか。
きっと彼女は少し強引にでも誘わないと、来てくれないし。
『決まりですね、Aさん』
「……センラさんって、なんか狡いです」
『だってこうでもしないと、Aさん行ってくれないでしょうし』
「も、もう……センラさんのご飯抜きにしますからね」
『ええーっ、それは困るなあ』
ほんの少しだけ、彼女と近づけた気がする。
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