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「はい、熱いから気をつけてな」
『ありがとう』
ホットチョコレートを冷ますように軽く息を吹き掛けて、ほんの少しだけ口に流し込んだ。
甘くて柔らかいチョコレートの味が口中に広がって、胸の辺りからぶわりと暖かくなるような気がした。
「おいし?」
『うん、おいしい。もしかして手作り?』
「そ!うらさんと俺で作ったんよ」
へらりと笑った坂田くんは満足そうに持っていたマグカップに口付けた。
『2人ともありがとう、なんか温まったかも』
「ええよええよ!な、うらさん!!うらさんもAちゃんにホットチョコレートあげるからって張り切ってたもんな!」
「…うるせー、坂田も人の事言えねーだろ」
2人の様子を微笑ましく見つめながら、また甘いそれを口に入れる。
寒いのは本当にキツかったけど、この2人とこうやってゆっくり話せたのは良かったかも。いつもは忙しくて中々ちゃんと話せないし。
『あ、そうだ!』
がたりと椅子から立ち上がると、彼らは頭の上に「?」を浮かべて私を見た。
ちょっと待ってて、とだけ言い残して小走りで更衣室に入って行く。
カバンの中のとある紙袋を見つけて、私はそれを持ってまた2人の所へ戻った。
『これ、2人に用意してたんだけど…』
リボンで括り付けられた小さい箱を2つ取り出して、彼らに渡す。
うらたくんは緑の箱で、坂田くんは赤い箱。
2人はそれを見た途端、嬉しそうに目を輝かせて私を見た。
「えっ、えっ、これチョコ??チョコ???」
「え、マジ?もしかしてバレンタイン?」
ずいっと私に迫る2人に「チョコ、だけど、」と驚きを隠せないような声色で呟く。
その言葉を聞いてもっと嬉しそうにしたうらたくん達に、私はくすりと笑みをこぼした。
正直、キッキン側の担当の人たちってチョコ…というか甘い物を頻繁に味見とかしてるわけだし、そんなに興味無いと思ってたんだよね。…喜んでくれてるなら良かったけど。
「嬉しい!!ありがとな!!」
「…俺も、ちょー嬉しい。ありがと」
『うん。…いつも助けてもらってるし、2人には渡しておきたいなーって』
すると坂田くんはぱあっと顔を明るくして、私にぎゅうっと抱きついてきた。苦しいぐらい。
『わ、』
「ほんまありがとう!!めっちゃうれしい!!だいすき!!!」
「あ、おい坂田!!!」
体のバランスが崩れてしまう勢いで抱きつく坂田くんに苦笑する。
ついでにうらたくんも控えめに裾を掴んできてる。
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いろみず(プロフ) - ぐわぁぁぁ(尊死) (2021年6月27日 19時) (レス) id: be92b83ba0 (このIDを非表示/違反報告)
もものせ(プロフ) - ぷちゃさん» 公開しました!!御報告ありがとうございます! (2021年6月19日 0時) (レス) id: 4421996c2f (このIDを非表示/違反報告)
ぷちゃ(プロフ) - コメント失礼します。しまこちゃんのお話の1話目が抜けている気がするのですが、追加していただけないでしょうか、? (2021年6月18日 23時) (レス) id: 09d034a7a0 (このIDを非表示/違反報告)
乃々夏(プロフ) - 100,000hit おめでとうございます!!!すごすぎますね!!! (2021年3月26日 21時) (レス) id: e426f8e368 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 1の時初コメした者です…! 久しぶりにこの作品を見つけて読んでみるとやっぱり最高でした…!!更新待ってます! (2021年3月21日 23時) (レス) id: b5c026bc9f (このIDを非表示/違反報告)
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