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「配信終わった〜」
『お疲れ様、お茶飲む?』
「いや、さっき配信で開けたお酒余ってるからだいじょぶ」
ふにゃりと笑った彼は、少しだけ顔が赤かった。坂田は元々お酒に強い訳ではないし、数口飲んだだけでこんなになってるんだろうなあ。ふわふわしててかわいい。
『…あの…坂田、』
「A」
彼はちょっと真剣な顔をして、私に向き直る。
え、って少し動揺しながら思ったけど、すぐに思い出した。
「29歳の俺も、よろしくお願いします」
彼は、さっき誕生日を迎えたばかりだった。
勿論最初に祝いたいのは山々だったのだが、私はいつでも祝える訳だし、今日ぐらいはと思ってリスナーの皆さんに譲ってしまった。
坂田も配信する直前まで「ほんまに配信していい?寂しくない?」なんて言っていて、私に気を遣っていてくれたみたいだ。
『うん。おめでとう坂田』
「…ありがと」
私の言葉を聞いて目を伏せた彼は、とても嬉しそうに笑った。
歳をとるのが嫌だとか言っていたけど、祝われるのはやっぱり嬉しいみたいだ。
『ケーキ、一緒に買いに行こうね』
「ケーキってそんな……なんか大袈裟やない?」
『いいの!!ロウソクふーってしたいでしょ』
「…べつに……」
苦笑して頭を掻いた坂田は満更でもなさそうに見えたので、ケーキは買いに行こう。そうしよう。
『だってわたしの誕生日の時はケーキ買ってきてくれたのに』
「それはAの誕生日だからやろ」
『坂田の誕生日もケーキで祝いたい〜〜!!』
「…まあ、Aがそうしたいなら」
ふふ、と小さく笑った坂田は、やっぱり嬉しそうだった。
…ん??坂田の誕生日なのに、ワガママを言っているのは私じゃないか。…まあ坂田の為のワガママだから良しとしよう。
『ありがと、坂田』
そう言ってふにゃりと微笑むと、彼は言葉を詰まらせて目を逸らす。
浅くため息をついた後、何の前触れもなくキスをした。
んむ、と変に声を漏らして彼を見ると、少し熱の篭ったような瞳を揺らしていた。
口を離して、そのまましばらく見つめ合う。
何、どうしたんだろう。
『……な、なに?』
「…や、なんか……変にスイッチ入ってもーた」
『………坂田のスイッチ、よく分かんない』
そのキスをされた唇を手で抑えて、ほんの少し頬が熱くなったのを感じた。
へへ、と悪戯っぽく笑った坂田は私の頭を撫でる。
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いろみず(プロフ) - ぐわぁぁぁ(尊死) (2021年6月27日 19時) (レス) id: be92b83ba0 (このIDを非表示/違反報告)
もものせ(プロフ) - ぷちゃさん» 公開しました!!御報告ありがとうございます! (2021年6月19日 0時) (レス) id: 4421996c2f (このIDを非表示/違反報告)
ぷちゃ(プロフ) - コメント失礼します。しまこちゃんのお話の1話目が抜けている気がするのですが、追加していただけないでしょうか、? (2021年6月18日 23時) (レス) id: 09d034a7a0 (このIDを非表示/違反報告)
乃々夏(プロフ) - 100,000hit おめでとうございます!!!すごすぎますね!!! (2021年3月26日 21時) (レス) id: e426f8e368 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 1の時初コメした者です…! 久しぶりにこの作品を見つけて読んでみるとやっぱり最高でした…!!更新待ってます! (2021年3月21日 23時) (レス) id: b5c026bc9f (このIDを非表示/違反報告)
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