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満月が映える、星一つ無い群青色の空。
時折雲がかかっているのもまた、趣があるような気がする。

視線を空から自分のすぐ隣に落とせば、床に真っ黒な刀を置き私と同じ様に夜空を眺めているうらたさん。

うらたさんの瞳に映った満月は何処か儚げで、見ているだけで泣きたくなるような美しさであった。
彼の瞳越しの月の方が、何百倍も綺麗だ。

「今日は満月なんだな」

少しばかり目を細めて、彼がそう呟いた。

うらたさんは、月が似合う御方だ。
紫陽花の葉のようなあの緑の瞳に月が映った時、それには何とも言えない美しさが現れる。

そしてその瞳が此方に向けられた時、私は生きていて良かったと思える。

『そう、ですね。綺麗です』

本当は月なんかどうでも良いぐらいに哀しくて悔してくて、わあわあと泣いてしまいたいのだけれど。
それで、そのまま二人でこの理不尽な世から逃げ出してしまいたい。

二人で平凡に幸せに暮らしたいのに。

三人ぐらいの子供に囲まれて、私が家事をして、うらたさんが薪とかを取りに行って。
そう、それでいいのに。

「声震えてる。寒い?」

『……少し』

寒いんじゃなくて、泣きそうなんですよ。うらたさん。

そんな簡単な事も言えずに飲み込むと、彼は自分が来ていた白と水色の羽織を私に掛けてくれた。羽織にはうらたさんの温もりが少し残っていて、うらたさんの香りがした。優しい匂いだ。

『うらたさんは、寝ないんですか』

「俺?俺は……いつでも出れるようにしないとだからさ」

『……そうですか』

彼は、全く怖がっていないようだった。むしろ無邪気な笑顔で私に話しかけてくるぐらい。

私としては怖がっていて欲しかった。怖くて戦場になんか行けない、私と一緒に居たい。と言って欲しかった。

正義感が強くて、優しくて、誰よりも努力家な彼はそんな弱音言わないのだろう。
最期ぐらい、弱音吐いてよ。

『うらたさん』

「ん?」

彼は小さく返事をした後、私の方に寄った。肩が触れるぐらいの、近い距離。

もう、あまり優しくしないで。本当に。貴方の愛おしい香りを思い出してしまう。
寂しくなってしまう。

『どうしても戦わなきゃいけないんですよね』

「ああ」

迷いのない声。彼は大将様に尽くすつもりなのだ。

まあ彼は軍の中でも一等強くて刀の技術もあるので、うらたさんが嫌と言ってもお仲間が許さないのかもしれない。

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いろみず(プロフ) - ぐわぁぁぁ(尊死) (2021年6月27日 19時) (レス) id: be92b83ba0 (このIDを非表示/違反報告)
もものせ(プロフ) - ぷちゃさん» 公開しました!!御報告ありがとうございます! (2021年6月19日 0時) (レス) id: 4421996c2f (このIDを非表示/違反報告)
ぷちゃ(プロフ) - コメント失礼します。しまこちゃんのお話の1話目が抜けている気がするのですが、追加していただけないでしょうか、? (2021年6月18日 23時) (レス) id: 09d034a7a0 (このIDを非表示/違反報告)
乃々夏(プロフ) - 100,000hit おめでとうございます!!!すごすぎますね!!! (2021年3月26日 21時) (レス) id: e426f8e368 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 1の時初コメした者です…! 久しぶりにこの作品を見つけて読んでみるとやっぱり最高でした…!!更新待ってます! (2021年3月21日 23時) (レス) id: b5c026bc9f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もものせ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年10月5日 1時

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