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決勝が始まった。相手は井闥山学園という学校らしい。
コートの中では、全員が走り回りボールを落とさないように必死に戦っている。両者、力にそんな大差はないようで、取って取られてを繰り返す。
双子も先程の様子とは全く異なり、コートの中では生き生きしていて、そして真剣な顔で戦っている。
…なんだか、私も部活をしたくなってきた。
『(…がんばれ、)』
一瞬たりとも姿を逃しまい、と10番のユニフォーム姿をずっと目で追いながら、必死に心の中で祈った。
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『(…倫太郎、まだかな)』
試合後、倫太郎と再開した場所に再び戻ってきて、倫太郎が来るのを待つ。
おそらく控え室でミーティングやら何やらやっているんだろう。
『(なんて、声掛けよう)』
ほぼ互角だった稲荷崎と井闥山の決勝。勝ったのは井闥山だった。
見ていた感じ、みんな調子も悪くなかったし全員がよく戦い抜いたと思う。初心者でも分かるくらい金髪のセットアップだって綺麗だったし、倫太郎のスパイクとかブロックもよく決まってた。
…しかし、井闥山にはほんの少しだけ及ばなかった。ただ、それだけ。
『(惜しかったね?すごかったね?次がんばって?…いや、どれも違うなぁ)』
閉会式も終わり、既に人も少なくなった廊下はシーンとしている。
壁に寄りかかりながら、はぁ、とため息を零すと少し廊下に響いた。
「そこで何やっとるん?」
すると突然低い声が聞こえて、驚いてバッと顔を上げる。
そこには、灰色で毛先だけが黒に染まっている髪型をした男性の姿。…私の推し(仮)のキタさんだった。
『あ…人を待ってて』
「ほうか。でも残っとるんはもう稲荷崎くらいしかおらんで」
『倫太郎を待ってて、…角名倫太郎を』
「角名…?」
キタさんはきょとんとした顔で首を傾げる。え、かわいいなおい。
次の瞬間、「っ北さん!」という大きな声と共にグイッと引き寄せられ、ふわっと柔軟剤の匂いに包まれた。
斜め後ろを見上げると倫太郎の顔がそこにあって。私は驚いて『倫太郎…!?』と声をかけるも、彼は真っ直ぐキタさんをみつめている。
「ちょっと、抜けてもいいですか」
「…ええよ、あんま遅ならんようにな」
「ありがとうございます」
『え?え?』と困惑する私を他所に、倫太郎はずんずんと私の腕を引っ張っていく。
とりあえず後ろを向いてキタさんにペコッと頭を下げると、キタさんも軽くお辞儀をしてくれた。
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宮兄弟最推し - 最近ハイキューのオタクになって、読むの、投稿されてかなり遅くなりましたが、最高です!胸の奥がギューンてなりました。 (5月20日 20時) (レス) @page48 id: e2e9177bef (このIDを非表示/違反報告)
名無し23523号(プロフ) - めちゃくちゃリアル、私も時々寝落ち通話する男の子がいるのでわかる〜!!ってなりながら読んでました笑面白かったです! (2022年1月1日 20時) (レス) @page48 id: 0378de78dc (このIDを非表示/違反報告)
naonao(プロフ) - ばりええ話でした!この話好きです!他のキャラの寝落ち通話話とかみてみたいです! (2021年10月25日 2時) (レス) @page48 id: d20e044f3d (このIDを非表示/違反報告)
そこら辺にいる低音野郎、(プロフ) - もう最高でしたッッッ‼‼‼‼更新無理せず頑張ってください‼‼‼‼ (2021年10月17日 20時) (レス) @page26 id: aed207b57b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たみ | 作成日時:2021年10月7日 23時