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Aさんの家は、歩いて15分程で着くらしい。
たわいのない話をしていると、ちょうど帰路の半分を超えた辺りでポツポツと雨が降ってきた。
「降ってきましたね。傘持ってますか?」
『今日忘れちゃって。角名くんは?』
「俺もです」
そんな会話をしながら歩いていると、どんどん雨は強くなり、気付けばザーザー降りに。
ほんと今日はツイてない、なんて思いながら、あと少しで着くというAさんの家にお邪魔させてもらう事になった。
傘を借りて急いで寮まで戻ろうと考えていると、風邪を引くから、と半ば強引に大きめの着替えとともに風呂場に押し込まれた。
軽くシャワーを浴びた後、リビングのソファに座るびしょ濡れのAさんと風呂を交代する。
身につけた服からAさんの匂いがする、なんて馬鹿らしいことを考えていると、しばらくして風呂から上がったAさんがソファの俺の真横に腰掛けた。
風呂上がりのAさんは、頬が赤らみ、瞳も少しうるうるしていて、とても色っぽい。
…この人は、北さんの彼女だ。と何度も自分に言い聞かせて邪険な考えを取り除く。
『やまないね、雨』
「…そうですね」
外を見て呟く彼女を見ると、綺麗な首から肩にかけてのラインや、チラッと緩い服の上から谷間が見え隠れしている。
うわ、このままじゃほんとにまずい。と思い、ソファの背に手をかけ、少し距離を取ろうと腰を上げる。
その瞬間外で大きな雷が鳴り、驚いて2人でビクッと身体を反応させると、ソファの背から手が滑り、俺がAさんを押し倒すような体勢になってしまった。
「っ、すみません。今退きま」
顔を上げると至近距離にAさんの整った顔があり、息を飲む。
パチ、と絡まった視線、その瞳にどんどん呑まれていくような感覚。
『すな、くん』
痺れるような甘い声、とろんとしたような表情で求めるように呟かれたら、もう止められなかった。
どちらからともなく顔が近づき、始まりの合図が鳴った。
「っあ、Aさ、」
『ンンッ、ぁ、りんたろ、くんっ、』
苦くも甘い甘いその時間に溺れ、彼女と温度を確かめ合った。
腕の中で眠る彼女を見る。
本当はずっと前から惹かれていたのかもしれない。溢れ出るように、彼女が欲しくて欲しくて堪らなくなり、俺は北さんに正直に言おうと決意した。
俺のになってよ、Aさん。
イベリス
花言葉:【心を惹きつける】【甘い誘惑】
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作者名:たみ | 作成日時:2021年10月3日 20時