花物語【稲荷崎】 (ページ7)

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治たち３人に、どこに行ってるのか、と怪しまれながら昼休みにAさんの元へ行く回数を重ねる。

今日も別棟の空き教室に訪れ、フルートを弾くAさんを間近で見つめる。

あの愛おしい視線は俺じゃない、北さんのもんなんや。嫌や、俺に向けて。俺を見て。俺が北さんより早く出会っとけば…

フルートと傍に置き、花のような笑顔で俺に微笑むAさんの腕を引き、俺の腕の中に閉じ込めた。

「Aさん、好き」

『あ、つむくん？』

戸惑うAさんの声が俺の胸元で聞こえる。

一度吐き出した想いは、口に出したら止めることができず、Aさんへの愛おしさが溢れ出てしょうがなかった。

「好きや、…好き。Aさんが、好き」

ぎゅっと華奢な身体を抱きしめる。ふわっと香る花のような匂い、全部、全部好きや。

北さんの彼女やってわかってる。それでも、もう俺にはAさんしかおらん。

『……私も、好き』

Aさんの言葉に驚いて体を離し、顔を見つめてみると、ずっと欲しいと思っていた視線がそこにあった。

…今、まぎれもない俺に向けられている。俺のもんや、俺のAさんなんや。

愛おしそうな顔で微笑むAさんに、自分の心の中で堰き止めていたものが消え、噛み付くような、想いを確かめ合うようなキスを何度も何度も繰り返した。

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両想いだとわかってからというもの、あの空き教室に足を運んではAさんと甘く酔いしれるような秘密のひとときを過ごすようになった。

キスだけでは飽き足らず、もっともっとと欲が出た。けど、Aさんは俺の全部を受け入れて、俺の要求に優しく微笑んで答えてくれる。

愛おしさを含んだ甘い視線に加えて、余裕のない乱れた妖艶な表情。全てが愛おしくて、心も身体も肩書きも、はやく俺だけのものにしたくなった。

俺だけのもんなのに、北さんに彼女という肩書きは奪われたままとかそんなん嫌や。

「んっ、はよ、ぁ、北さんとっ、別れて、？」

『っんぅ、侑く、あっ、』

「っ、別れて、俺のっ、彼女なってや、！」

きめ細かい綺麗な白肌に、１つ赤い華を咲かせる。

印付けたってええよな？だって俺のAさんやもんな？はよ、この関係が北さんにバレればええ。はやく、はやくAさんの全てを俺のものに。

ブーゲンビリア

花言葉: 【情熱】【あなたしか見えない】

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