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俺は少し屈んで、俯くAに目線を合わせて、その傷ひとつ知らない頬にするりと手を添えた。
すると、少しビクッと肩を跳ねさせ、Aは下から俺の顔を伺った。
「…A。悪いことした自覚はあるか？」
コクンコクン、と震える体で小さく頷くA。
ああ、そんなに震えて可哀想になぁ。もうええよ、悪いことしたってわかってるならそれでええ。全部、Aの全部受け止めてやるからな。
震えるAの体を包み込むように、側に立つ４人に見せつけるように、ぎゅっと抱きしめる。
「ならええ。許したる。全部許したるよ」
俺は優しくAの頭を撫で、ポンポンと震える背中を軽く叩いた。
すると、Aは勢いよく俺の胸から顔を上げ、必死に訴えかけるように叫んだ。顔を顰め、歪んだ表情のAと近距離で目が合う。
『だめっ、許さないで！こんな私、許さないでよ…！』
「俺が許すいうたら許すんや。気にせんでええ。Aはこれからもずっと俺の隣におってくれたらええから」
『っ、しん、すけ、く』
Aを安心させるように、優しく微笑み、頭を数回撫でた後、またふわりと包み込んだ。
視界の端では、俺の言葉に立ち尽くす４人が驚いたり、悔しそうに唇を噛み締めたりしている。
「っ、なんでですか北さん！絶対別れた方がええのに！！」
「別れるかどうかは俺の自由や。…なんや、文句でもあるんか？」
侑の言葉に俺が言い返すと、侑だけでなく４人ともギリッと奥歯を噛み締め、悔しそうな顔をした。
コイツら魂胆が見え見えやねん。どうせ俺にAとのこと報告して、別れさせた後、自分と付き合わせようとでも思うとったんやろ？
…けど、残念やったな。俺は何があろうとこの手だけは絶対に離さん。Aは誰にもやらんって決めとるから。
Aの隣は、一生俺の、俺だけのもんやねん。
ふと視界に入ったAの鞄に付いているアイビーの花のキーホルダー。これは俺がAにプレゼントしたものや。
そのキーホルダーが俺の気持ちを表すように、チリン、と音を立てるように揺れた。
愛しいものを包み込んだ腕の中。
『またダメだった』と彼女の鈴が鳴るような声で、呟かれた気がした。
アイビー
花言葉:【永遠の愛】【死んでも離れない】
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作者名：たみ | 作成日時：2021年10月3日 20時
