愛憎渦巻く物語 ページ5
その物語は経営が傾きかけた蒲苓(うれい)屋の女将が綺麗な顔立ちの娘を父親と思しき男から買い取ることから始まる。
その娘は艶やかな黒い髪と美しい黒い一重の目を持っておりメリハリの利いた体つきをしていた。
彼女は自ら江姫(ごうひめ)と名乗りその美貌と才覚ですぐさま花街全体の注目の的となった。
それをよく思わない者たちが現れた。
主に花魁や女将たちだ。
特に3大花と呼ばれていた花魁たち、
京極屋の麗桜(れいおう)花魁、
荻本屋の美恋(みこい)花魁、
ときと屋の揺媛(ゆらひめ)花魁。
ときと屋は経営が傾き始めた。
揺媛花魁は柳の精のように細くしなやかな肢体をもつ女性だった。
才女として有名で詩歌の類に優れていたという。
彼女が店に出始めたころから通い続けていた男がいた。
男は度々、揺媛花魁に身請け話を持ち掛けていた。
揺媛はその男に惚れこんでいたのは知れ渡っていた。
そして身請けが決まったのさ。揺媛花魁の。
しかし、ときと屋の女将がそいつの身の回りを調べたことで事態は一変する。
何度も身請け話が成立したのにそれっきり店にやってこない男を不審に思った揺媛花魁が女将に相談し、女将が調べたところ男は多額の借金を負っていることが判明する。
女将は激怒し男の家に突撃し”借金だらけの男には渡せられない!”と男に訴える。
男は何も言わなかったという。
花魁は”きっと私を身請けするために頑張ってくださるわ。きっと”と気強く振舞ったが男は妓楼にはそれっきり現れることはなかった。
1ヶ月ほど月が流れた。
揺媛花魁が花魁道中をしているときのことだった。
男
そいつを見つけたのだ。
しかも妓女を連れて。
揺媛花魁はその妓女が誰だかすぐに分かった。
その美貌で花街を虜にした女。
蒲苓屋の看板娘。
江姫だった。
その後、ふらりと店に現れた男は身請け話を破談にするといい静に去っていった。
江姫とその男はときと屋の前を自慢げに歩き回ることもあったそうだ。
江姫の身請けの話が上がったのはその頃だろう。
身請け話を聞くと可哀想に。
花 魁
揺 媛は河に身を投げてなくなったという。
新月の日に。
不思議なことにその男も花魁の死の1ヶ月後、新月の日に同じ川に身を投げたのさ。
でもおかしなことに二人の身投げは目撃されているのに亡骸は上がらなかったんだとさ。
そして江姫は花魁へなったとさ。
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作者名:玉葉 | 作成日時:2022年3月23日 21時