鬼退治には黍団子が必須です。[鬼滅の刃]

＿ ページ15

「……私はどこで間違えたのかしら」






Aは頸を半分しか斬っていなかった。

鬼となって人を殺してしまった罪を償わせるために。






「…それに気付いただけでも進歩だよ」

「……私は罪を償わなければならない。お願い。私の頸を斬って」






そう懇願する女に






「桃の呼吸 捌ノ型 桃園結義(とうえんけつぎ)」






今度こそAは女の頸を確実に(・・・)斬った。








むくりと起き上がった女の目はもう猫のような目をしていなかった。







「あ…れ、」

「お早う。いや、こんばんは？」

「どうして私は死んでないの…」






女は自分の震える手を見る。


…あれ、爪が短い。

そう言えば、頬も痩けていない。



私…鬼じゃないの？





「…死にたいと望むのなら。生きて罪を償いなさい」

「……っ、」

「それが、あなたへの罰よ」

「…、ごめ、なさ…っ」






ぐるる、と鳴るお腹。

そうだ、私、お腹空いてた、




鬼と化していない今。

女はAを見ても食欲は沸かなかった。




温かいご飯が食べたい。

お味噌汁。お漬物。焼き魚……






「…ごめん、今黍団子しかないや」






はい、と差し出された黍団子。

恐る恐る手に取って食べると、殺してしまった人の怨念が聞こえてきた。





　「……どうして僕を殺したの」
　「俺はお前に殺されなければ…っ」
　「ああ、お母様、お父様、ごめんなさい。僕……」
　「もっと生きたかったのに！お前になんか出会わなければっ」
　「俺たちじゃなくてお前が死ねば良かったんだ！」

　「……お姉ちゃん、私、お姉ちゃんのこと好きだったのに、」




耐えきれずに耳を塞いでもなお聞こえてくる声。

ああ、脳に語りかけているのか、と理解するのに、そう時間はかからなかった。

＿→←＿

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す