公爵と最高審判官 ページ5
sideリオセスリ
漸く本来の姿を見せた幽霊君は年相応に涙を流し、俺の前にしゃがみ込むと目元を拭い始めた。嗚咽を漏らしながら……けれど必死に泣き止もうとしているんだろう
「…沢山泣けばいい」
涙を拭ってやる事すら出来ないことがこんなにも歯痒く思える日が来るとはな……触れようと手を伸ばしても、俺の手はA君の身体をすり抜けちまう。何も出来ない俺はA君が泣き止むまで、その様子を眺めるしか出来なかった。今まで我慢していた分が堰を切って溢れ出したのか、ずっと泣いている彼の姿を見つめ…俺はほんの数十分前の出来事を思い出す
「これが例の公文書かい、ヌヴィレットさん」
「あぁ」
フォンテーヌ廷のヌヴィレットさんの元を訪れた時、彼は俺が頼んでいた公文書を用意して待っていた。渡された公文書に目を通しながら俺は彼に疑問を投げ掛ける
「なぁヌヴィレットさん、幽霊は幽体を自在に変えられると思うか？」
「ふむ…そのようなものを見た事がない故に何とも言えないが……キミの其れは、幽体を変えている幽霊を知っている、とでも言いたげな口ぶりだな。その公文書と何か関係があるのだろうか？」
質問を投げ返してきた彼にチラと視線を向ければ、彼もまた此方を真っ直ぐと見詰めていた。包み隠さず全てを話せと言っているかのような視線に俺は小さくため息を零し、公文書を軽く叩き口を開く
「この事件……審判は終わり容疑者は捕らえられて要塞送りとなってはいるが…解決した訳じゃないよな？」
「……あぁ、被害者の少年が未だに行方不明となっている」
「その少年の幽霊がメロピデ要塞に居るんだよ」
「なに？」
「最初は別人だと思ったがどうにも気になって色々と下でも調べてみたんだ。そしたらあの子がこの事件の被害者であると分かった……それでもやっぱり可笑しくてね。言動が容姿と合っていない様に見えて、この公文書を見に来た訳だ。これには下では分からなかった情報も載ってるからな」
「その少年は本当にメロピデ要塞に居るのか、リオセスリ殿」
「アンタの言いたい事は分かるぜ。だから俺が動くのさ」
何か言いたげな彼の言葉を遮れば、ヌヴィレットさんは此方を見て微かに眉を顰めた。あぁ、どうやら今の俺は…公爵の顔を出来てないらしい
「家族の元に帰れる様に……A君は必ず俺が見つけ出す」
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←幽霊君と管理人さん
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 228人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
風船ガム - フウマさん» 初めまして！コメントありがとうございます！リオセスリの男主の小説……ないですよね…！更新頑張ります！ (10月10日 21時) (
レス) id: 2737623305 (このIDを非表示/違反報告)
フウマ(プロフ) - はじめまして リオセスリの小説ありがたいです！しかも男主なのが最高です！更新頑張ってください！ (10月10日 9時) (レス) id: 20896eb70c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：風船ガム | 作成日時：2023年10月9日 23時
