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泡沫の月_ここじゃないどこかへ行きたい 1 ページ18





ある日のこと


私はいつもより遅い時間の電車に乗っていた


テスト期間で、部活も無くて、本当はもっと早く帰れた

だけど、家じゃ集中出来ないので、駅から少し離れた図書館で勉強して、それから帰ることにした

閉館のアナウンスが流れた後、支度をして、図書館を出る

外は寒くて、暗くて、寂しい


本当は親に迎えに来てもらおうかとも思った


だけどきっと、母親は仕事だし、父親は弟の習い事で付きっきりだろう



家に帰っても、きっとひとりぼっち



そう考えると、駅への足取りはすごく重かった






駅に着いて、改札を抜けて、目的の番線に向かう


ああ、帰りたくない

どうせ帰ってもひとりぼっち

勉強だってしたくない

父親とも母親とも弟とも、誰とも会いたくない


あの家では、お互いがお互いに無関心だ

動くのは、自分の損得がかかった時だけ

家族ってそんなものなのかな

友達が言う"家族"と、私のかぞくは全然違うよ…


もう嫌だ

あの家に帰りたくない



ここじゃないどこかへ行きたい


なら



行こう



あの家がある駅を抜けて


終点まで

いや、どこまでも


決めたらあとは早かった


自販機で定期を使ってホットのお汁粉を買って

電車に乗り込んだ


どこまでも行ける


ここじゃないどこかへ行ける


そう思ったら、心が軽くなった


席に座る私の周りには、意外と乗客がいた

この人たちにも、私みたいに悩みがあるのだろうか


スーツを着たおじさんも

メイクがバッチリのお姉さんも


…そんなのわかってた


誰もが何かを抱えてるって

その証拠に、"ここ"には何かを抱えてる人たちがいる

だったら私はどうすればいい

誰に打ち明ければいい

誰か私を受け止めてよ

押し潰されそうなんだ

責任、プライド、ストレス、勉強、人間関係

それらがどろどろに溶けて、絡みついて、私を飲み込もうとする

もう、死んでしまいたい

だけど、

未来はわからない、から

進、ま、ない、と

歯を食いしばって

私に絡みつく全部を引きちぎって

ふらふらになりながら、

私は前に進む


だけど、

全身傷だらけで

またボロボロになって


私はいつになったら、救われるの


進みたいんじゃない、進まなきゃいけないんだ

進まないと、置いて行かれるから

この世界から

立ち止まることは許されない


まるで


この電車みたいだ




気づいたら、私は電車を降りていた

あの家がある駅に

私を置いて、電車は走り出す

私は結局、どこにも行けない


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ルナストーン(プロフ) - 参加を希望致します。【緑白のエミリアル/黙秘権を行使します/僕の人生は】 (2020年12月24日 15時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
久遠(プロフ) - [削除済]さん» パスワードを変えたので、改めてパスワードを送ります。修正していただいて構いませんよ (2020年4月12日 17時) (レス) id: fa9adaf89c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:製作者一同 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2020年4月11日 0時

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