上弦の零は__されたい、水柱は___になりたい。【冨岡義勇】

殺して。 ページ13

＊ ※グ ロ注意、胡蝶さんが本当に可哀想なので気をつけてください








ただ叫んだだけなのに、気迫にでも怖気付いたのか、胡蝶は逃げてくれない。





水柱の顔色は悪くなるばかりなのに。








「早く逃げないと水柱に殺される! だから早く逃げ―――」









「A」









ビシャッと音がして、床に鮮血が散った。





腕を斬られ、血溜まりの中に真っ白な腕が沈んでいる。









「『俺以外の者とは喋らない』…約束したよな?」









もう一度、同じ音。









その後に、耳を劈くような悲鳴。









「あぁぁああぁ、ああ…なん、で…冨岡、さ……!!」









水柱に腕を斬られた胡蝶の近くへ寄って、再生した腕も使って止血をする。





着物の裾を破いて斬られた腕に巻きつけて固く結べば、今度は胸に違和感。









心臓を、刺された。









「……だめ…だめだ! 水柱!!」









それだけなら良いのだ。









刀は私の胸を貫通し、先端が胡蝶にも刺さっていた。









「『俺以外の者に触れない』」









水柱は刀を抜く。






そうすれば、胡蝶は血を吐き出すわけで、その血を浴びて飢餓感が一層強くなる。







嗚呼、口に入ってしまった血が美味しくて堪らない。






もっと飲みたい…肉を貪りたい…!!




嗚呼、腹が減った…腹が減って仕方ない…









水柱は私と胡蝶の両足を斬り落とした。








「『俺以外の血肉を口にしない』、『俺以外の者に興味を持たない』」








胡蝶が痛みから逃れるためか、必死に身を捩らせ私に抱きついて叫ぶ。







私は治るから良いのだ。





だが、傷が治らない人間が、こんなにも痛み苦しみながら死んでゆくのかと思うと、自然と同情してしまう。







嗚呼、痛い、嫌だ。





死にたくない、死にたくない。







そう叫ぶ胡蝶がとても痛々しくて、飢餓感など何処かへ行ってしまう。






ただただ、目の前で泣き叫ぶ女が、救われて欲しいと思う。









もう片方の腕が斬られ、首に刀が添えられた。









「『俺を心の底から愛する』」









首を半分ほど斬られたその時、胡蝶は事切れた。









＊

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