次の駅まで ページ47
．
次の駅まで
．
「…二宮くん、起きて」
二宮くんが私の肩に頭を預けてから、かれこれ10分経った。
最近こんなことがよくある。
ふたり分の座る場所を見つけて、手招きされて。
数分もしないうちにうとうとしてくる。
それで気付けば、いつもこんなことに。
首元にかかるふわふわの黒髪がすこしくすぐったい。
制服のネクタイがすぐそこに見えてる。ブレザー越しにやわらかく体温が伝わって。
頭の真ん中をぎりぎりと締めつける香りが、ふらふらすぐそばに漂ってる。
心臓がもたない。
この次の駅で降りなきゃ、
でも起こしたくないような、
「……二宮くーん、」
とりあえずぱたぱた腕を叩いてみる。
肩に重みがあって動かしづらいから、反対側の手で。
…反応なし。
どうしよ。着いちゃう。
まだ到着のアナウンスは流れてないけど、オレンジ色してる窓の外の景色は住宅街に変わってきた。
「…早く起きて、」
腕をぐらぐら揺らす。
二宮くんの体がすこし揺れる。
ふわって目の前を通る、かすかに甘い香りに押しつぶされて。
息を吸うたびに甘さがつま先から頭のてっぺんまで充満する。
「おーい、」
全然起きる気配ない、な。
……よし。
「…すきだよ、」
ぱち、って瞳が開いた。
「俺のこと？」
「…起きてたの」
悪質だ、
寝てるフリして、きっとぜんぶ見透かされてる
「起きてたよ？」
「……なんで」
くふ、って笑ってわたしの顔を覗きこむ。
すこし睨むみたいに見返した。
「…ね？」
ほら、やっぱり確信犯だ。
「俺がここにいたら、意識してくれるでしょ？」
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きいろいあめ(プロフ) - 凜さん» 凜さん！お久ですあけおめです！わぁ…嬉しすぎるお言葉ありがとうございます…！今後ともよろしくです！ (2019年1月11日 18時) (
レス) id: f76b3d85cb (このIDを非表示/違反報告)
凜(プロフ) - あけおめでございます！コメントお久しぶりです凜です！最後のニノさんの最後の一言、射抜かれましたね笑笑さすがです。やはりきいろいあめさんの文体がどタイプで、すこすこのすこでございます。今後も楽しいお話待ってます！ (2019年1月9日 23時) (レス) id: ea7207ff5a (このIDを非表示/違反報告)
凜(プロフ) - ほんまですか！！今から見に行きます！！ (2018年10月9日 23時) (レス) id: ea7207ff5a (このIDを非表示/違反報告)
きいろいあめ(プロフ) - 凜さん» 新しいおはなし、今日からなのでよければ見に来てくださいね、！ (2018年10月9日 18時) (レス) id: f76b3d85cb (このIDを非表示/違反報告)
きいろいあめ(プロフ) - 凜さん» 楽しい授業になってたら嬉しいです…笑 (2018年10月9日 18時) (レス) id: f76b3d85cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きいろいあめ | 作成日時：2018年9月4日 18時
