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(重岡side)
「重岡さん、」
病室に入ってきた彼女は顔色がすぐれず、
疲れきっている様子だ。
「よぉ、A。疲れてそうやな、大丈夫か?」
病人が訊くのもあれかな、なんて。
「いや、ちょっと課題が過大で。」
「冗談言えるくらいなら問題あらへんか(笑)」
「重岡さんこそ、大丈夫ですか?」
「ごめんな、、死んでもーた…」
「縁起でもない冗談は勘弁してくださいよ(笑)」
彼女は、おれが髪のない頭を隠そうとニット帽を被っていることにも、
前回会ったときより顔や身体がやつれたことにも、
何も言わなかった。
いつもどおり接してくれて、
いつもどおりおれのくだらない冗談に笑ってくれて。
「ありがとうな。」
「え、どうしたんですか急に(笑)」
感謝といとしさで胸がいっぱいだ。
「そういえば、バンド、辞めちゃうんですか?」
「あぁ、そう。おれが大学祭間に合わないから、
臨時で編成変えたとか言うてるけど、
絶対大学祭のライブで盛り上がってそこで思い出共有して
おれが帰ったころには居場所あれへんくなってるよ。」
好きなひとに愚痴を洩らす。
あまりしたくなかったけど、
彼女ならきっとこんな豆腐メンタルなおれに
一喝入れてくれるだろうと、垂れ流した本音。
「そしたら、タンバリン担当にでもなればいいんじゃないですか?」
「アホ!(笑)」
「ごめんなさい(笑)でも、居場所はきっとなくならないです。
重岡さんはみなさんから好かれてるって知ってますから。」
「そんなことあらへんよ?」
「いえ、誰が重岡さんのこと嫌いになんかなりますか。
それに、実際人気者だって聞きましたもん。」
「誰に?」
「神山さんです。」
おれの親友、神山。
そうだ、ここにAを連れてきてくれたのもあいつだった。
どうしてあいつはおれと仲良くしてくれているんだろう、
時々そう思うことがある。
確かに学科もサークルも同じで関わる機会が多いからだと思うけど、
おれは神山にいつも罪悪感を持っていた。
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――4年前
この学校を受験した日、
すぐ近くの席に神山がいた。
黒髪にきちんと制服を着た受験生で教室が埋め尽くされる中
あいつは金髪にピアス、そして使い古したリュック。
学費が高い理学部は、富裕層のまじめ秀才ばかりが受験するため、
あいつの風貌は明らかに浮いていた。
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カキピー。(プロフ) - らーさぁさん» 覚えてて下さったとか光栄すぎて……(T-T)はい!らーさぁさんの作品楽しみにしています!笑執筆活動頑張ります!ありがとうございます!レス遅れてすみません! (2016年7月20日 5時) (レス) id: da9b62ff0c (このIDを非表示/違反報告)
らーさぁ(プロフ) - カキピー。さん» わわわ!!勿論覚えてますよ!お久しぶりです。そんな風に仰っていただけて光栄です…ありがとうございます( ;∀;)これからもお互い執筆頑張りましょう!またことぴさんのほうにもお邪魔させてもらいますね(・ω・)ノ (2016年7月16日 8時) (レス) id: cac586eb2c (このIDを非表示/違反報告)
カキピー。(プロフ) - らーさぁさん。覚えているでしょうか。改名してしまいましたが、二階堂君の「祈り」を読み、らーさぁ様にハマった者(旧jyanikotopi)です。このお話が凄く大好きです。やはりらーさぁさんは私の神、です←黙)))更新、頑張って下さい! (2016年7月16日 4時) (レス) id: da9b62ff0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らーさぁ | 作者ホームページ:http://kit2-love
作成日時:2016年6月15日 1時