恋は透明に輝く (ページ25)

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「山田さん、今日はもうお昼で閉館にするね」

「はい、分かりました」

出勤早々、退勤時間を教えてくれた神宮寺さんはどこかそわそわしている。多分お昼頃から上陸する台風を気にしているみたい。

今にも雨が降り出しそうな曇り空に窓の内側から家に帰るまで雷がなりませんようにって内心で何度も唱えた。

「よし、じゃあ…歩き？送っていこうか？」

神宮寺さんとふたりで戸締りをして外に出ると車の鍵を軽く上げ気遣ってくれたけど
走ればものの数分で帰れるし、大丈夫ですと断った。

雨が少し降り始め傘を刺そうと取り出したけど、風の強さに断念した。
そんな事より、まだ来ていない紫耀が心配になってしばらく考え込んでいたら聞きなれた声に名前を呼ばれた。

「A？」

「あ、紫耀。傘持ってないの？」

「うん、雨降るの知らなくて」

「え、台風くるんだよ？だから図書館ももう閉めたの」

「そうなの？だからこんなに風強いんだ」

その瞬間大振りになった雨が紫耀の髪や服を濡らして、慌てて入れた傘も強い風になんとか持ちこたえている状況だった。

「紫耀、家近い？」

「駅からすぐだから走って帰るよ」

駅からすぐって、ここから駅までがそんなに近くないのに。
真夏の雨だっていうのに濡れている紫耀は少し寒そうにしてて気が付いたら

「うちにおいで」

なんて言葉をなんの考えもなしに口にしていた。