48話、私の過去2 ページ10
ぐるんと空間が歪むような感覚を味わいながら今度の私は台所の入り口に立っていた。
テレビのチャンネルが切り替わるように今度は別の過去へ投げ出されたようだ。
と同時に耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。子供と女性の泣き声だ。
ああ…オールフォーワンとはどこまで私の過去を知っているんだろう
こんな記憶まで鮮明に再現し、私をまた傍観者として放り込むなんて悪趣味にもほどがある。
ほぼ咄嗟に駆け出し、母の手からやかんをとりあげ、焦凍の顔に冷水をかける。
こういう時はどうしたらいいんだっただろうか…
『焦凍！大丈夫！？』
大丈夫なわけないだろバカ。何か答えようと薄く呻く小さい体を支える私の手は震えていた。
熱湯がかけられた部分が赤く爛れている。
10年前と全く同じ光景だ。
後から駆けつけてきたお父さんと姉さんと兄さんが、焦凍の応急処置をしたり、病院に連絡したり、お母さんを介抱したりしている。
これも10年前と全く同じ光景だ。
我が家の最悪な記憶だ。
それからお母さんが家からいなくなった。
焦凍は訓練に打ち込むようになった。
あれほど元気だった兄さんが喋らなくなり、
姉さんは私たちの母親変わりになろうとした。
お父さんだけが変わらなかった。
相変わらず、No.1ヒーローの座を奪うこと以外考えてないし、
焦凍を物としてしかみていない。
私は距離をとるようになった。
暇を持て余して勉強するようになった。
一人庭で個性を爆発させたり、
料理を始めたり、
映画に影響されて、庭に氷の城を建てたこともあったし、
兄弟の誕生日に3段重ねのケーキを作ったこともあった。
そのどれもが誰かが私自身を見てくれる要素になるわけでもなく虚しさだけが瓦礫のように積み重なっていった。
見てくれたお母さんはもういないし、優しさに満ちていた家はない。
私がどれだけ足掻こうと、失敗作の紛い物では本物に決して届かないのだと、そう思い知った。
続く (更新停止中)
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真白 - おもしろかったです!次が楽しみです (2022年12月18日 4時) (
レス) @page10 id: 1bd364c53c (このIDを非表示/違反報告)
彩 - 続きが読みたいですね！更新待ってます！ (2019年2月22日 17時) (レス) id: f48b2c45f5 (このIDを非表示/違反報告)
マユリ - 敵のボスである、オール・フォーワンに出会ってから何がおこるのか、めっっちゃ楽しみですわ！ (2019年1月4日 18時) (レス) id: b378003baa (このIDを非表示/違反報告)
きい - もうなんなんですか？ほんとに.........。大好きです！応援してます！ (2018年7月1日 6時) (レス) id: 363d108b6a (このIDを非表示/違反報告)
ロウバイ(プロフ) - れ・ω・るりりさん» サボってたのに暖かいコメントありがとうございます！これからもぼちぼち更新してくのでよろしくお願いします！ (2018年6月30日 21時) (レス) id: 15837dda6f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ロウバイ | 作成日時：2018年4月19日 18時
