勝手にシェアハウス（夜行性のイラストレーター視点）

みんなには秘密なんです。 ページ5

どうやら、今、まほちゃんが各部屋に助けに行ってるらしい。

別に誰かが病むことは珍しくない。

このシェアハウスはそういう人だらけだからね。

パーカーの袖をまくる。すると、包帯だらけの腕が見えた。

袖の長いものしか着ないのはこのせいなのである。これがバレたら…

きっと、もうここにはいられなくなる、あそこに戻らなくてはいけない。

今日も行かなきゃ、あの人のために…。

こっそり、部屋を出た。誰にも見つからないようにハウスを出ると

ポツポツと雨が降っていた。この程度なら傘はいらない。

急がなきゃ、怒られちゃう、早くしないと。
ーーーー40分後ーーーー

とある住宅街にたどり着いた、ここにあるのは

私の家、いわば、実家である。

私はこの家で「道具」として過ごして来た、正直苦痛だ。

でも人間不信な私は、あの人のことを信じるしかない。

殴られたり、蹴られたり、切られたり、ぶつけられたりするけど

あの人は裏切ったことはなかった。

あの人は、それでも私をここまで育ててくれたし、居させてくれた。

「道具」である私がここを出る条件で、毎週火曜日の夜にここに来て

「道具」とならなくてはいけない。じゃないと……

シェアハウスが……燃やされる。

あの人は嘘をついたことがなくて、本当に刺された事もある、浅いけど。

家からはほとんど出ないから、周囲からもそんな事に気付かない。

行かなきゃ、あの人のところに、

父さんの、ところに……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『父さん……来たよ……』

父「遅い」

『ごめんなさい…』

父「じゃ、ちょっと道具になれよ」

『…………』

父「いいのか、あそこがどうなっても」

『！！……嫌です…』

父「今日も腹立ってんだよ」

『……道具、になります』

そう言うと、容赦なく床に叩きつけられた。

痛い、でも、みんな守るには、我慢…しなきゃ……。

蹴られる、殴られる、物を投げられる、叩きつけられる。

もう立つことも出来ないや…痛い、苦しい。

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