BORDER LiNE (ページ4)

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03/27 21:35 ページ4

「わたし、ほんとは歩いてもなんとかなる距離なんですよ。だから、もうちょっと待つくらい大したことないんで。」

「えー、いやでもっ、お姉さんの方が先に待ってたわけだし…」

「お兄さん、荷物も重そうだし、私が先に乗ってしまったら傘もないわけでしょう？」

彼はでもー、とか、うーん、とか言いながらいろいろ考えている…と思えば、突然こちらを向いて、

「お姉さん、帰りどっち方面ですか？」

「私は、その、線路の向こう側……なんですけど」

「あ、じゃあこうしませんか？…一緒に乗りましょう、タクシー」

彼はさっきと同じかわいらしい笑顔で、そう言い放った。

その後タクシーがやってきたのは、靴の中まで雨がしっかりと侵食してしまう程に時間が経ってからだった。
タクシーのおじさんが言うに、タクシー乗り場までの道中、事故によって交通規制されていた区間があったことと、想像通り、雨によってタクシーを利用する人が多かった為、なかなかこの駅までタクシーがたどり着かなかった…ということらしい。

「まあ、そんな日もあるよね。」

と言えば、彼もそうですね、仕方ないですね、と笑ってくれた。

「ほんとに、ありがとうございました。長い間傘に入れてもらっちゃって。」

「いやいや、この雨じゃあね。困ったときはお互い様ですよ。」

「でも本当に、助かりました。」

良いことをすると、気分もいいし、思わぬラッキーもあるもんだなと思っていたところだったから
彼に何度もお礼を言われると逆に恐縮してしまう。

「マルバツマンション、僕いつもオフィスに行くときに通ってます。ほんとに通り道で良かった。」
「そうなんですね。じゃあもしかしたら、どこかですれ違ったりしてるかもしれませんね。」

タクシーでの道中、世間話をする程度には打ち明けた彼とそんな話をしながら帰路につく。

「今度、お礼させてくださいよ。」
「いや、いいですって！大したことでもないですから。……あ、この辺りで大丈夫です。」
「そういう訳には……お姉さん、名前聞いてなかったんですけど…」
「そういえば……Aです。今更ですけど…」
「もっと早く聞けばよかった。僕、山本です。あ、Aさん、タクシー代はいいですよ、通り道なんだから。」
「いや、そういうわけにも…」
「せめてものお礼です、ほんとAさんがいなかったら僕、今頃ずぶ濡れで途方に暮れてましたから。」

大した傘じゃなかったから、私も山本さんも結構濡れてしまったのだけど。