BORDER LiNE (ページ2)

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03/27 22:00 ページ2

人の入れ替わりのある時期というのは、仕事もバタバタするもので、新しい仕事の引継ぎだとか、入ってきた新人くんの教育だとか、目の前の仕事を片付けることに手いっぱいで、気が付けば今週もあっという間に金曜日。
なんなら、飲み会だった先週より駅についたのは遅い時間だった。

まだまだ今週もあちこち飲み会なんだなと、賑やかな駅を通り抜けてそのまま家へと歩き出そうとすると

(わ、雨じゃん。)

ぽつり、ぽつりと雨が降り出してしまった。
駅から家へは歩いて10分ほどだけど、なんとなく雨脚が強まりそうな気がして、疲れたし、金曜日だし、と自分に言い訳をしながらタクシー乗り場へ足を向けた。実はちゃんと、折りたたみ傘は持っている。でも雨の中歩くのが面倒くさくなったのだ。

折り畳み傘を取り出して、タクシーを待つ。
いつもはそう待たずと来るはずのタクシーが、今日に限って全く来ない。雨降ってきたしみんなタクシー捕まえてんのかな、とか、これなら歩いて帰ればよかったかなとか、そんなことを考えてると不意に隣に人影が増えた。

(荷物多いし、傘無いのかな)

割と小柄な男の子。高校生？いや、この時間だし大学生かな。
大き目のカバンを持った男の子が、私の後ろに並んでいる。

(大荷物だし、雨降ってきたらタクシー乗りたくなるよなぁ…早くタクシー来ないかな)

見知らぬ男の子だけど、この子の為にもタクシーよ早く来い！と念じていると突然、

「え……」

思わず、声を出してしまうくらい急に雨脚がざあっと強くなりだした。
こんな土砂降り聞いてない。ついてない。

「わっ…！」

隣から聞こえた声に、ハッとしてチラリと横を伺うと、パーカーのフードを被って大きなカバンを前に抱えなおそうとしてい彼の姿が目に入った。
さすがにちょっとかわいそうになって、私はほぼ無意識に

「小さいけど、ないよりはましだと思うので」

小さな折りたたみ傘の半分を、翳していた。