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「僕は祥彰です。僕の方が年下だし、Aさん別に敬語じゃななくていいですよ。」
名前で呼んでくれたって、と言うとAさんはまたちょっと顔を赤くしながら
からかわないの!とちょっとむっとした。
「じゃあ、山本…くん、うん、山本くんにします。」
「名前じゃなくて?」
「もう!だから!……あっ、やばっ…時間!」
かなりのんびりここまで来たけれど、そうだ。Aさんは会社に行く途中で、
「ごめんなさい、そろそろちょっと急がないと。」
「こっちこそ、すいません。声かけて、時間取らせちゃって。」
「ううん、朝からちょっと楽しかったです。声かけてくださって、ありがとうございます。」
改札を通って、僕たちはそこで別れた。
Aさんの会社と僕の学校は方面が逆で、残念ながら同じ電車ではなかった。
AAさん。
こんな風に連絡先を交換するなんて思ってなかったけど、
(いい人、だったな。Aさん。)
なんだか、不思議な気分だった。
-------
(びっくりしたびっくりした!!)
会社へ向かう電車内で、私は一人、はやる気持ちを抑えるのに必死だった。
山本くんが実は有名人でしたという衝撃的な事実を知ってしまった、先日。
あの日起こった事は夢だったのではと思うくらいには薄れかけてだけに、思わぬ再会に本当に心臓が飛び出すんじゃないかと思った。
あの日の私は、確かに山本くんのことを知らなかったわけで、山本くんの方もたまたま覚えていたから声を掛けてくれただけに違いない。
なんとか平常心、と自分に言い聞かせながらやり過ごしたが、
山本くんを知った時以上のさらに衝撃的な展開に、私はもう半ばパニックだった。
(や、山本…くんの、連絡先が…私のLINEに…!)
落ち着け私、と私の中のどこか冷静な自分が必死に宥める。
自分で自分を宥める状況ってなんだ、というツッコミはこの際置いておこう。
一体全体どうなっているんだ。
本当に人生の幸運という幸運を全振りしてしまってるのではないか。
これじゃあもういつ事故にあってもおかしくない。
落ち着け…と、念仏のように心で唱えていると、LINEにピコっと1のマークがついた。
山本です!お仕事頑張ってくださいね!
ああ、山本くんからだ。
ついに私は、有名人と知り合いになってしまったんだなぁ…と、どこか遠い気持ちになる。
LINEの画面を見ながら、私は越えてはならない一線を越えてしまった気がしてならなかった。
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作者名:湊 | 作成日時:2019年11月6日 18時