【A3!】私自身を。

〇本人と賭け〇 ページ27

幸side








火のないところに煙はたたない。




噂話というものはいつも、装飾はされているものの、正しいことが多かった。



今回も例に漏れず、期待は裏切られた。




本当は善人かも、なんて思わせた彼女は今、

椋に向かってアドバイスという名の攻撃をしているに等しかった。



椋も純粋だから、真剣に聞いているが、俺は我慢ならなかった。






幸｢ちょっと。｣






突然挟まれた俺の怒りのこもった口調に、アイツは無表情で振り向いた。






幸｢なんで部外者のアンタが偉そうにしてるわけ。



椋へのアドバイスとか何様のつもり？



俺たちには監督がいるから、アンタの出る幕じゃない。



見学者は見学者らしく黙って見てて。｣






だいぶキツい言い方をした俺と無表情のあいつをみて、椋はオロオロとしている。




対して俺の言葉を一身に受けたあいつは、何故か監督を振り返った。



すると監督が慌てて弁明するかのように喋りだす。







いづみ｢ご、ごめんね幸くん！



私が頼りないから…｣






幸｢はあ？



なんで監督が謝るわけ？｣






いづみ｢実は…世羅ちゃんのアドバイスが上手だからね、私が頼んだの。｣






頭でも抱えたい気分だ。



監督の決めたことに口出しする権利なんてないが、これからこいつと稽古なんて出来る気がしなかった。






すると今まで黙っていた天馬が口を開いた。






天馬｢確かにアドバイスは的を得ている。



お前は芝居が出来るか？



見せてやればいいじゃねえか、お前の演技で。｣






本当にこいつは、何を言い出すかと思えば。




…でも、案外それが適切なのかもしれない。




俺は強気に彼女を睨むように見据えた。



彼女の表情は伺えない。

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