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眉間にしわを寄せた状態で私の腕を引っ張り、人を避けて進んでいく。
途中、そんな私たちを不思議に思って声をかけようとした部下の人たちが、風見さんによって止められていた。
むしろ、この男を止めてよ。
「・・・離してもらえますか？」
人気のない、というか降谷さんの車の停めてあるところまで来てた私たちは、腕を掴まれているから自然と向かい合う形になる。
気まずい。さっさとホテルに帰りたい。
さっきから何回か声をかけているのに聞く耳持たず。こいつ結局何がしたいの？
掴まれた腕に熱が集中する。お願いだから離してほしい。
そう思っているのに、ふうっとため息をついた一瞬の隙に降谷さんは私を抱きしめた。
「っ！！！離して！！」
「・・・断る。A…好きだ。」
「っ！！」
思わず動きを止めてしまった。だって、昨日よりもずっとずっと声が辛そうだった。
でも、私は頷きたくない。
「やめて。」
「A。話を…」
「聞きたくない！！だって貴方は！」
辛そうな瞳をぶつけてこないで。
寂しそうな顔をしないで。
愛おしそうに抱きしめないで。
「１年前私を利用するだけして捨てたじゃない！！元彼？
笑わせないで！貴方は日本のためなら誰でも利用できるって言ったじゃない！！」
思いっきり抱きしめられてるせいで、不本意でも顔だけを彼のほうに向けて精一杯睨む。
こんな体勢でいたくもない。想いがあふれる。
まだ好きだとこの腕に縋りたくなる。でも、私は――
「日本でやることは終わったわ。残りが終わったら帰るから。」
私はＭＩ６。イギリスに帰らなきゃ。
降谷さんに腕の力が一瞬だけ緩んだ隙を狙って腕から脱出する。
乱れた服と気持ちを整えていたら、また後ろから抱きしめられた。
「分かった。」
「…分かってないわよ。バックハグとか、前がだめなら後ろとかでも言いたいつもり？」
「いや、お前を何が何でも日本に留める。」
「はっ？なに言って。」
「お前が好きなんだよ。だから」
後ろから気配が消えて、また向かい合う形になる。さっきよりも一層真剣な顔つきな彼の瞳が私を射抜く。
「今度は本気でお前をオトしてみせるから。」
チュッとほほに軽くキスを落としてから、「あ、メシは時間の空いてるやつらと行く。お前も来い。」と拒否権のない命令口調で伝えるだけ伝えたら、何事もなかったかのように、部下の元へと戻っていった。
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作者名：kgymk | 作成日時：2019年11月27日 17時
