・ ページ39
彼女の背、右側に飛んできた拳を、左にふい、と首を傾け避けたAは左手で受け止めた。
そのまま手を軸にくるりと振り返り男性とご対面する彼女は満面の笑み。ギチギチと握る拳に力を入れている様だった。
「それ言ってンのはあんたでしょ？あァ？」
グンッと受け止めた左手を下へおろし、瞬間彼女の右足が高く舞い上がる。
空気を切り裂く音は一瞬で、瞬きの合間に何が起こったのか理解しがたかった。
「…次言ったら潰すっつったじゃん。へし折るぞザコ」
掴んでいた手を引いた事により男の頭が下がった首のスレスレ、触れそうで触れない位置で足をピタリと止めたA。
そのままもし蹴りを食らっていたのなら、床に叩きつけられ起きるのは困難であっただろう。
思わず味方の俺がゾッとしてしまう。ヤンキーの世界、コワイ。
手を離し足もおろした彼女は、今度こそ目の届かない範囲まで背を向け走り去る男を見送り、手を払うように打ち鳴らした。
「出水、私トイレ。手ぇ洗いたい」
「まってる…」
ぱんぱん、と砂を払う様に上下に擦れる手を眺めながら、か細く告げる。
お手洗いから戻ってきた彼女と今度こそ個人戦のブースへ向かえば、入口で固まっていた数人が勢いよくこちらを振り向いた。
どれも見たことのない顔で、C級の隊服を着ている。俺らを見るや否や単語にも満たない悲鳴が喉奥から掠れ、肩を震わせ顔をそむけた。粗方すぐに話が回ったのだろう。
「…A」
「……慣れてる、大丈夫。」
はぁ、と軽くため息をつく彼女はその場から逃れる数人に構うことなくブースの中央へと進む。
隣を歩きながら、今なら大統領側近の気持ちがわかる気がする、と再び場違いなことを考えていた。
空いているブースを探そうと二人で見上げていると、急にAが振り返る。
その先には彼女が愛してやまない影浦隊長こと影浦さんと、鈴鳴支部の村上さんがこちらへ向かっていた。
ぱぁっと横から見てもわかるほど幸せそうな笑顔をこぼすAに、サイドエフェクトのせいかいち早く気づきほんの少し口元を緩める影浦さん。
近づいた二人に挨拶をすると、影浦さんはAの頭に手を置いてわしゃわしゃと撫でながらつぶやく。
「オメー、なんかしたか？今日いつも以上に刺さる」
「いッッえ、…出水くんと大人しく個人戦する約束しかしてませんが」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 468人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Umi(プロフ) - 君の瞳に鉛弾さん» オワー！！共に沼で遊びましょう！コメントありがとうございます！ぜひ影浦くんに溺れてください(？？？) (2021年10月18日 14時) (
レス) id: 1d9c35310c (このIDを非表示/違反報告)
君の瞳に鉛弾 - 影浦沼は存在したのだ…こちらこそ供給過多で窒息死しそうです (2021年10月11日 4時) (レス) @page25 id: 04b80a02c7 (このIDを非表示/違反報告)
Umi(プロフ) - Aさん» ありがとうございます！わぁぁそう言って頂けてとても嬉しいです…！！ぜひ影浦沼へっ！続きがんばります！ありがとうございます！ (2021年9月19日 18時) (レス) id: 266bb1a809 (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - 続編おめでとうございます！めちゃくちゃお話が好きで一気に読ませていただきました！これからも続きが楽しみです、、、今ものすごくキュンキュンして推しじゃないのにカゲさんが好きになりそうです、、、、！更新待ってます！ (2021年9月18日 12時) (レス) id: 373120d77d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：み
| 作成日時：2021年9月17日 11時
