19話 ページ20
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既視感のありすぎる問いに、ゆるゆると首を振る。
「さっぱりわかりません。私が生きている理由も、皆そろいもそろって同じことを私に聞く理由も」
そう言えば、彼は難しい表情をして黙り込んだ。無言の時間がしばらく続き、やがて、じゃあ、と彼が言う。
「質問を変えるぞ。……お前、こいつに何かしたか？」
「何か……と言われても……」
「こいつがいた牢屋に入ったんだろう？ じゃあ襲われたはずだ。その時に何かしなかったか？」
そう聞かれて、あぁ、と思い出す。
「ええと……飴を口の中に突っ込みました」
「……あめ？」
「はい、飴です。サイダー味の」
「さいだー……？」
その顔にみるみる困惑が広がるのを見て、もしかしてこの世界にサイダーというものは存在していないのか、と気づく。同時に、なぜかこの人は悪い人ではないような気もしていた。無表情だけれど、感情が直ぐに表に出ているからかもしれない。あと、明らかにあの二人組よりも、青年に対する態度が柔らかい。
「ええと、サイダーというのはですね、私の世界の飲み物で、こう、水に二酸化炭素を溶かした液体に＿＿」
「……ちょっと待て、私の世界？ どういうことだ」
「あぁ、それはですね……」
自分がおそらく異世界から来た人間であるということを、これまでのエピソードと共にかいつまんで話すと、青年はぽかんとした顔をして、疑うような顔になって、段々真剣になって、最後には呆れた顔になった。
「……お前、超豪運の持ち主って呼ばれてないか？」
「よくわかりましたね？」
「はぁ……なるほど、そうか。これで色々合点がいった。なんでお前が死んでないのかも、なんで指名手配されてるのかも」
聞こえてきた指名手配という言葉に、「それ！」と思わず叫べば、彼はびくりと肩をふるわせた。
「指名手配ですよ！ どうして異世界から＿＿例え信じてくれていなくてもそれが真実なので言い続けますけど＿＿来て、この世界についてまだ1日も経っていない私が指名手配されているんですか？ もしかして、異世界から来たからですか？ 不法侵入みたいな？」
一気に言えば、「一旦落ち着け」という冷静な声。
「まぁ、混乱する気持ちもわかなくはないが……とりあえず、お前が指名手配されてる理由からだな」
「……それは？」
おそるおそる尋ねれば、至って平常のままの紫の瞳が私を射貫く。
「お前が、闇の巫女だからだ」
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作者名：ホロスコープ | 作成日時：2022年5月4日 16時
