【WT】マンホールに落ちたら指名手配されたんですが誰か無実を証明してくれ (ページ17)

今日:14 hit、昨日:10 hit、合計:16,425 hit

16話ページ17

.

　痛みは長く残り続けて、頭を撃ち抜かれて死んだのだと思った。

　……しかし、頭に穴があいたにしてはあまりにも意識がはっきりしている。まさか即死して霊体にでもなってしまったのかと自分の手を見れば、手はそこにあった。感覚も、あった。

　じゃあ一体どうしてこんなに頭が痛いのかというと、思い切り床に転がされて頭を強く打ち付けたからだ。……では、普通に立っていたのに急にそんな状態になったのはなぜか？

　意外にも理由は物理的なもので、私は突如として横なぎに押し倒されたのだった。

　……正直、突然のことすぎて何が起きたのかはさっぱりわからない。けれど、気づいた時には私の目の前に紫の瞳があって、何か言おうとした口を手で塞がれていた。空いている方の手で、口元に指が当てられ、つまり、静かに、というジェスチャーをされる。鋭い視線に圧を感じて無言でコクコクと頷く。その数秒後に、アルトの声が響いた。

　「死体を回収して、片付けましょう。もうじき使いもやってくるころです」
　「意外とあっさり死んだな。手間が省けて助かったぜ。それはどうする？」
　「そのうち傷も治るでしょうし、回収人が来るまで拘束しておきます。意識は＿＿どうやらないようですね。好都合です」
　「んじゃ、先にこれを森にでも捨ててくるか。狼か人狼のエサくらいにはなるだろうよ」

　会話と共に、ガサガサというような音が直ぐ近くでして、数十秒続いた。やがて、何かを引きずるような音がして、それと共に足音が遠ざかっていく。

　そこからさらに数十秒後、「……行ったか」という声と共にようやく押さえ込まれていた口が解放されて、何者かにのしかかられていた身体も解放された。その人が立ち上がり、私も混乱しながら身体を起こす。そして、初めてはっきりとその姿を見る。

　私のことをなぎ倒したその人は、ベルトや不思議な形の装飾品がついた変わったローブを身につけている一人の青年だった。