【WT】マンホールに落ちたら指名手配されたんですが誰か無実を証明してくれ (ページ15)

今日:3 hit、昨日:10 hit、合計:16,414 hit

14話ページ15

.

　入るべきか否か、かなり迷う。

　けれど、先ほどのアレは明らかに争いの音だった。誰と誰が争っていたのかもわからないけれど、もしかしたら＿＿もしかしたら、鍵があるかもしれない。どのみち、他の部屋のノブを触ってみても、鍵が開いている気配はなかった。……行くしかない。どのみち行動しなかったら死ぬのだから、せめて後悔のないように死にたい。

　薄く開いた扉の隙間からそっと中の様子をうかがう。薄暗い部屋からは、何の物音も聞こえなかった。意を決して、隙間をほんの少し大きくして部屋の中へと滑り込む。明るい廊下から薄暗い場所へ来たから、目が慣れずに数秒間何も見えなかった。やがて目が慣れて、徐々に部屋の様子がわかってくる。

　その部屋は、漆喰のようなものでできた部屋だった。全体的に黒っぽく、家具などは何もなかった。その代わりに、部屋にはとんでもないものがあった。より正確に言うと、いた(・・)。

　部屋に入って正面の壁に、もたれかかるように気絶しているのは、1人の人間だった。

　長すぎるくらい長い髪と、陶器のように白い肌には見覚えがある。牢屋の中で私に襲いかかってきた、そして飴を食べさせたら大人しくなった、あの人間……もしくは人間のような誰かだった。確か、あの二人組はきんときと呼んでいた気がする。彼は、鎖で手と首を繋がれていて、その鎖は壁の金具に繋がっていた。

　そして、彼の顔にべっとりと付着した血と、そして所々にある殴られた跡を見て、思わず悲鳴を上げそうになる。酷すぎる。一体誰がこんなことをしたのだろう。あの二人組だけでは、ここまでにはならないんじゃないかと思った。

　どうしよう、と悩んで、試しにでも声をかけることにした。単純に、傷が心配だったのだ。